2020年韓国映画連続上映 第2弾「PMC:ザ・バンカー」

シネ・ウインド
ⓒ 2018 CJ ENM CORPORATION, PERFECT STORM FILM ALL RIGHTS RESERVED

 監督がキム・ビョンウ、主演がハ・ジョンウ。2013年の映画『テロ、ライブ』に続く2度目のコラボレーションとなる新作『PMC:ザ・バンカー』が公開となります。韓国映画ファン、サスペンス映画好きの方でしたら「おっ」と思われるかもしれません。『テロ、ライブ』はラジオアナウンサーが脅迫電話を受けたことから、爆破テロ事件の生中継を行ううちに危機に陥る様子を描いたサスペンススリラー映画で、韓国では権威ある青龍映画賞にて新人監督賞を獲得するなど大きな評価を受けました。それから6年、キム・ビョンウ監督の長編映画2作目となるのは、地下要塞を舞台とした戦闘アクション『PMC:ザ・バンカー』になります。

『PMC:ザ・バンカー』あらすじ
 PMCとは民間軍事会社のことで、正規軍に代わって警備・戦闘・救援・支援といった様々な軍事的サービスを提供する傭兵組織です。ハ・ジョンウ演じる主人公はこれに属するチームリーダーで、片足が義足でコードネームが「エイハブ」という明らかに『白鯨』の船長が元です。今回、CIAから依頼された任務が、韓国と北朝鮮の軍事境界線の地下要塞で北朝鮮最高指導者の身柄を確保するというもの。任務は滞りなく遂行されるはずでしたが、ここで中国側のPMCから攻撃を受け、重武装部隊に追い詰められます。さらには北朝鮮最高指導者も混乱のなか瀕死の重体に陥る羽目に。この危機的状況をどう乗り切るか。

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 このアクション映画はどんなところが他と違うか。それは軍事境界線の地下30メートル。誰にも知られることのない地獄の戦闘。どうやって助け出すか。どうやってこの絶体絶命を脱するか。このあたりですね。瀕死の北朝鮮トップを生かして連れて行かなければならない。さあどうするか。攻撃されている仲間を助けなければならない。さあどうするか。岐路に立たされるチームリーダー。こうなったら生き残った北朝鮮のエリート医師と協力するしかないぞ、と。その決断力と行動力。この逆境から生還を目指すスリル。このあたりなんです。こんな状況で、どうするか。どうなるか。韓国の映画作家たちはそういう緊張感を募らせる演出が巧いひとばかり。この映画も韓国気鋭の演出熱が迸る注目作です。

『PMC:ザ・バンカー』キャスティング

 主演しておりますのが、韓国の人気俳優ハ・ジョンウ。『チェイサー』や『哀しき獣』をご覧になった方も多いのではと思います。彼のファンでしたら絶対に観ていただきたいですね。と言いますのも、本作の地下要塞を舞台としたアイディアは彼が監督に提案したことから、企画が動いたとのことです。さらにプロデューサーも兼任し、1か月のアメリカ滞在によってスラング混じりの英語セリフや高度なガンアクションを習得するといった根気の入った役作りを実施しております。
 北朝鮮側のエリート医師を演じるのはイ・ソンギュン。犯罪サスペンスの傑作『最後まで行く』に主演された方ですね。『パラサイト 半地下の家族』では旦那の社長さんを演じたので、印象強い人も多いのではないでしょうか。脇を固める共演者には、カナダ出身のケヴィン・デュランド。テレビドラマ、映画、舞台で活躍目覚ましいジェニファー・イーリー。『クール・ランニング』でお馴染みのマリク・ヨバ、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のスペンサー・ダニエルズらアメリカの俳優も参加しております。
 韓国映画ですが、海外からも実力ある俳優を招いて撮影しています。多国籍の不法移民たちで構成された傭兵チームになっているからですね。これも面白いところです。

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『PMC:ザ・バンカー』見どころ

 ハ・ジョンウ演じる優秀な傭兵リーダーのエイハブが、想定外のアクシデントの連続に困惑するところ。もう少し失敗したら全員が死ぬ。そんな状況でどんな決断をするか。仲間にどう命令するか。死にかけている標的をどうやって救うか。こういうピンチに対処するハ・ジョンウの演技がいいですね。絶対に生きてここ(地下バンカー)から出てやるという精神と、非情な決断も辞さない兵士といった感じをよく出し切っています。
 医師を演じるイ・ソンギュンとの無線越しのやり取りでは人間臭いところを見せます。この映画のシナリオは「助け出すか、見捨てるか」といったテーマがあり、劇中で度々提示されます。その決断の描かれ方も見せ場になっています。

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 ビョンウ監督はじめとする、スリル満載の映画を作ってやろうというこだわりと挑戦心が映画を立派なものへと仕上げています。傭兵チームが敵の銃火器中隊に追い込まれていく戦闘演出。さらにその現代的な撮影。ビョンウ監督はスリリングな撮影には相当思慮を巡らせているようで、『テロ、ライブ』でも『PMC:ザ・バンカー』を観てもそのこだわりが感じられます。
 本作ではP.O.V.カムによる一人称視点映像やドローン撮影を導入し、戦場への没入感を誘います。撮影監督にあたっているのは『監視者たち』や『22年目の記憶』といった人間ドラマやサスペンスアクションなどに多く携わってきた経験豊かなキム・ビョンソ。地下要塞を構築する美術やアクションの設計、俳優の演技、サスペンスをどのように映し出していくかも観てみてください。

上映企画部 若槻

■上映期間 8/1(土)~8/7(金)