10/30(土)~11/12(金) シネ・ウインド上映 ※火曜定休
★図書展示があります。ぜひ、そちらもご覧ください!
★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/
★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/
没後20年、世界中で愛される“ムーミン”を生み出したアーティスト、トーベ・ヤンソン。
彼女は、いかに自由を愛し生きたのか。
トーベ・ヤンソンの半生と、知られざるムーミン誕生の舞台裏を描く情熱の物語。
“トーベをもっと愛したくなる、鮮烈な評伝劇”
「ムーミン」の作者であり、日本でも愛されているトーベ・ヤンソン(1914~2001)。15年に新潟県立万代島美術館で開催された「生誕100周年 トーベ・ヤンソン展」に足を運んだ方もいるだろう。私も幼い頃に見た岸田今日子が全配役の声を担当したパペットアニメや、学生の頃読んだ『ムーミン谷の冬』(以来トゥーティッキや、ムーミン谷の小さな生き物のファンに)で「ムーミン」に親しんでいたが、トーベの人となり、更に「ムーミン」以外の作品への関心が広がったのは、この展示以降だったように思う。
スウェーデン語系フィンランド人であるトーベ。故国フィンランドで制作された本作は、若き日の彼女の芸術家としての葛藤や、知られざる恋に焦点を当てた評伝ドラマである。
1944年、第二次世界大戦下のヘルシンキ。トーベは戦火の中で「ムーミントロール」の物語を綴り始める。高名な彫刻家である父との相克。左派政治家でジャーナリストである既婚者アトスとの恋。思うように評価されない創作活動。そんな中、トーベはヘルシンキ市長の娘であり、舞台演出家のヴィヴィカと出逢う。夫を持つヴィヴィカとの激しい恋から、トーベの人生は大きく動き始める…。
トーベ・ヤンソン役アルマ・ポウスティが素晴らしい。自由を渇望するトーベの万感を、クシャっとした笑顔や爪先まで神経の行き届いた身のこなしなど、全身で表現する彼女から眼が離せなくなる。創作や恋愛に炎を燃やし、酒や煙草を楽しみ、溢れる激情をダンスで発散するトーベの姿を知ると、親しんできた彼女の作品への印象さえ鮮やかに更新されるようだ。鮮烈な印象を残すトーベのアトリエに吹き込む「風」や、「嵐」の中をズンズン進む彼女の姿など、映像美とトーベの心情とが合致した場面の数々も、味わい深い。
「スナフキン」のモデルであるアトスの自由さと優しさ、「トフスランとビフスラン」誕生の契機となったトーベとヴィヴィカの秘めた恋(当時のフィンランドで同性愛は違法だった)、再現される「ムーミン」初の舞台化作品、そしてトーベの生涯に渡るパートナー・トゥーリッキ(『ムーミン谷の冬』などに登場するトゥーティッキ〈おしゃまさん〉のモデル。ファンなら画面に登場した瞬間、「トゥーティだ!」と嬉しく気付くだろう)など、「ムーミン」ファン感涙の誕生秘話も盛りだくさん。観終えた後、トーベのことをより深く知り、愛したくなること必至の一作だ。
シネ・ウインドでの上映時には、新潟市中央図書館協力のもと、トーベの著書展示も実施する。また、今年刊行のトーベファン必携と呼ぶべき『メッセージ トーベ・ヤンソン自選短編集』(久山葉子訳)、『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』(ポエル・ヴェスティン著 畑中麻紀・森下圭子訳 2冊ともフィルム・アート社刊)の販売も予定している。映画を楽しんだ後は書籍でも、じっくりトーベに思いを馳せていただきたい。
(月刊ウインド編集部 久志田 渉)
2020年製作/103分/G/フィンランド・スウェーデン合作
原題:Tove 配給:クロックワークス
監督:ザイダ・バリルート
トーベ・ヤンソン役:アルマ・ボウスティ
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