2022/11/14~11/18
一般1500円、会員1100円
11/18(金)上映後トークあり
(C)田中慎弥/集英社・2012「共喰い」製作委員会 前へ 次へ
昭和63年、山口県下関市。「川辺」と呼ばれる場所で、17歳の遠馬は父とその愛人と暮らしていた。父には「セックスの時に女を殴る」という暴力的な性癖がある。そのため、産みの母は遠馬が生まれてすぐ、彼を置いて家から出ていった。粗暴な父を疎んで生きてきた遠馬。だが、彼は幼なじみの彼女・千種と何度も交わるうちにやがて自覚していく。自分にも確かに父と同じ忌まわしい血が流れていることを――。
人間の根源にある性と暴力をあぶり出しながら、作品は格調高く、そこに豊饒な物語を現出させる。ストーリーの核にあるのは、血の宿命に囚われた父と息子の相克のドラマ。だが一方で、そんな男たちを尻目に凛々しくしたたかに生きる女たちの姿が、映画に前向きで清新な余韻すら与えている。昭和の後にやって来る女性の時代を予感させる物語は、「女性讃歌」を謳いあげた「北九州サーガ」に連なる、青山真治の正統な作品として位置付けられるのかもしれない。