おススメ企画《狂い咲きシネマパラダイス》

シネ・ウインド

銀平町シネマブルース 2/25(土)~3/10(金) _火曜定休
※ 2/25(土)小出恵介さん&日高七海さん舞台あいさつ


エンドロールのつづき 3/4(土)~3/17(金)_火曜定休
※ 3/4(土)上映後イベントあり

映画を描く映画とは昔からあるものですが、1,2年ほど前から世界各地で映画の思い出を振り返るような製作が流行ったのか、今年になって映画業界や監督業、映画館事情をテーマにした新作映画たちが続々と公開される流れが来ています。昔からの映画ファンも、これからの映画ファンも、さらに映画へ親しんでもらえたら、映画館関係者として冥利に尽きるわけですが、この機に乗じてみてかシネ・ウインドでも「映画」の映画を上映しようと《狂い咲きシネマパラダイス》として企画を発足しました。まずは日本映画『銀平町シネマブルース』を2月25日から。インド映画『エンドロールのつづき』を3月4日から2週間上映します。いずれも映画が好きで好きで仕方がない、映画がない人生は考えられないというような、映画と映画館へのラヴコールとなっています。映画ファンにはもちろん観ていただきたいのですが、これらの上映をきっかけに映画館へ通い始めるようになるような、新たな映画愛好者が現れてくれることにも期待します。

銀平町シネマブルース

『銀平町シネマブルース』は城定秀夫監督といまおかしんじ脚本という近頃の邦画ファンが注目するような初タッグ。小出恵介さん、吹越満さん、宇野祥平さんが主演で、埼玉のミニシアター川越スカラ座でロケを敢行。この映画、映画館が舞台で、主役も務めているんです。映画業界が日に日に衰退し、有名映画監督の不祥事が暴露され、全国各地の映画館の閉館が相次いでいるような、寂しい現状を目の当たりにしているなか、「映画はいいもんだ、映画館はいいもんだ」と理屈を放ってその趣を味わう作品が公開される。映画という生活の彩りは無くなってはならない。芸術も娯楽も更なる繁栄を。そういった製作の気概が画面から流れ出て、疲れた感性を解きやわらげるような、面白い一作になっています。かつて映画に関わっていた青年と、映画を観続けるおじさんが出会い、ミニシアターを舞台に人生の悲喜劇が内包されるようなお話です。映画は面白くて素晴らしい。でも一筋縄じゃいかないもの。幸も不幸も、苦楽も、浮き沈みもいろいろある。まるで人生。これを観たあと、映画文化や映画館への価値観が変わってくるかもしれません。

エンドロールのつづき

『エンドロールのつづき』はインド映画の新作。インド映画は歌って踊ったり、ド派手なアクションスペクタクルが繰り広げられるものを中心に日本へ配給されるので、こういった映画愛を語るヒューマンドラマは珍しい。最初から最後まで、もう映画を愛してやまない精神が溢れている。映画に魅せられた9歳の少年が、もっと観たい、映画を作りたい、もはや映画になりたいと健気な勢いで映画人生を行き始めるまでを描く。それを聞きますと、イタリアとフランスが合作した思い出の名作こと『ニュー・シネマ・パラダイス』を思わせますね。これは脚本と監督を務めたパン・ナリンが、自身の幼少期を振り返り実話を基に創出したストーリーだそうで、『ニュー・シネマ・パラダイス』のようなエピソードがかつて本当にあったようなんですね。それを聞いただけでも面白いですが、主演のバビン・ラバリ少年が映画の魔力に口を半開きに夢中になっていく姿。監督自身の故郷である風土。生活感。音響や陽光まで、大の映画ファンである監督はどこまでも撮影表現にこだわってみせました。そして実際の環境と生活を経て映画界へ進んだだけに、「成し遂げたいなら、発ちなさい、学びなさい」という激励を映画として世界中へ送ってみせた。この監督の映画を愛してやまない表現力とメッセージを、映画館のスクリーンから受け取ってみてください。

映画には人生が映ります。息もつかせぬ連続活劇や摩訶不思議なトリック撮影も映画の醍醐味ですが、本当にいい映画は生きている人の姿がありありと映り込み、目から内側へと沁み入ります。『ニュー・シネマ・パラダイス』でも語られましたが、映画とはいかに力を持った芸術であるか。そして時を経ることの何たるか。あのときの出会いがあって、夢中になるくらい感性が活き活きしていて、楽しむのも一生懸命だったあの頃。もう過ぎ去ったお話ですが、あの思い出は決して忘れませんよ、という映画詩。人々の心が荒み、映画界が堕ちていくいま、映画詩が蘇ります。これから映画界が再び盛り上がりを見せるかどうか、製作者、業界人、そしてお客様方次第です。これからも映画と映画館をよろしくお願いいたします。

宇尾地米人