3/2㈯~3/15㈮※火曜休館
2023年 フィンランド・ドイツ合作 1時間21分 配給:ユーロスペース
監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ
製作:ミーシャ・ヤーリ/マーク・ルオフ/ラインハルト・ブルンディヒ
撮影:ティモ・サルミネン
美術:ビレ・グロンルース
衣装:ティーナ・カウカネン
編集:サム・ヘイッキラ
音楽:マウステテュトット
出演:アルマ・ポウスティ/ユッシ・ヴァタネン/ヤンネ・フーティアイネン/ヌップ・コイヴ/マッティ・オンニスマー/シーモン・アル=バズーン/マルティ・スオサロ/サカリ・クオスマネン/マリア・ヘイスカネン
この悲惨な世界で、愛を信じる
前作『希望のかなた』(18年1月シネ・ウインド上映)を最後に引退宣言していた名匠アキ・カウリスマキだが、大方の予想通り、シレッと監督復帰した本作は、本国フィンランドや日本でも大ヒットを記録している。
理不尽に仕事を奪われたアンサと、アルコールに依存するホラッパ。もう若くない女と男の不器用な歩み寄りを描くカウリスマキの筆致は、「いつも通り」に見えて、画面の細部まで”珠玉”のような輝きに充ちている。ラジオから流れるウクライナの戦禍に心を痛めつつ、黙々と仕事に勤しみ、最後かもしれない恋を掴もうとする主人公たちを見つめるカウリスマキの眼差し故だろうか。
姉妹デュオ・マウステテュトット(フィンランド語で「スパイスガールズ」の直訳!)の鮮烈な楽曲はじめ冴えわたる選曲センス。『TOVE/トーベ』(21年10月)も記憶に新しいアルマ・ポウスティ始め、一見”無表情”な人々の心情を過不足なく描ききる演出の洗練。そして、オフビート極まる笑いの数々。いつも以上に深々と胸に沁みるカウリスマキの最新作をどうかお見逃しなく。(久志田渉)(月刊ウインド2024年3月号より)