シネ・ウインドで8/3(土)から一週間上映する「瞼の転校生」。大衆演劇の世界に生きる中学生を主人公にした青春映画だ。
この映画に登場する劇団の役で出演しているのが、実際の大衆演劇の「劇団美松」。その劇団美松が、8月に古町演芸場で1ヶ月間の公演を行う。これは、大衆演劇協会にも相談のうえシネ・ウインドと古町演芸場が協力し、タイミングを合わせて実現。そこで、劇団美松・座長の松川小祐司さん、古町演芸場の逸見友哉支配人を取材した。取材日7/30(火)は、古町演芸場では舞台の仕込みの真っ最中。前日まで浅草で公演し、深夜に新潟まで移動、2日後の8/1(木)には初演を迎えるという。
劇団美松は毎日昼と夜の2公演を行い、1ヶ月で約60公演、つまり連日異なる演目を行う。それ以外にも演目は全部で100本以上あり、役者はすべての台詞を覚えているという。稽古は毎日深夜にまで及ぶそうで、「特殊な世界ですよね」と松川さんは語る。
そんな多忙な劇団の映画出演は一つの挑戦だった。藤田直哉監督から大衆演劇協会に相談があり、劇団美松の出演が決定。東京の演芸場で2日間だけ休演し、劇団の出演シーンを撮影した。「いやー、大変でした」と語る松川さん。実際に劇団を取材して映画を撮影した監督のことは、「大衆演劇のディティールをすごく大切に作ってくれた」と語った。
また「映画で描かれているのは、ほぼほぼ実話です」とのこと。映画では、劇団は一ヶ月ごとに移動して公演を行い、その度に転校する主人公が描かれるが、それも事実。午後の授業は早退することが多く、友達作りには苦戦するという。大衆演劇の劇団員の多くは世襲制で、子供は生まれた時から芸の世界に生きる。しかし中には、公演先の町で入団を希望する一般の方もいるという。また、全国には劇団を応援してくれる「ご贔屓さん」と呼ばれる方の存在も。このあたりを知っていると、「瞼の転校生」がより深く楽しめるかもしれない。
「大衆演劇の人達の暮らしがあちらこちらに描かれている。知っている人も知らない人も楽しめると思う」と語る松川さん。そんな松川さんの趣味は、公演の合間にその町の映画館に映画を観に行くこと。こうして映画に出演できたのは嬉しかったそうだ。また、主演の松藤史恩さんとはたびたび公演にも足を運んでくれるほど仲良くなったという。
逸見支配人が「エンターテインメントは生活を豊かにする。特に劇団美松からは元気をもらえる」と語ると、松川さんは「ウチは元気です!男子校みたいに元気です!」と語った。
8/3(土)、シネ・ウインドの「瞼の転校生」上映初日には、主演の松藤史恩さん、劇団美松の松川小祐司さん、松川さなえさん、市川華丸さんが舞台挨拶。またその日の夜は、映画に登場する「瞼の母」を古町演芸場で上演するという、シネ・ウインドと古町演芸場のコラボレーションも実現する。万代と古町で、映画と演劇という、劇場体験の面白さに出会えるきっかけになりそうだ。
熊谷千尋(ちひろBLUES)
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