『ゴンドラ』

2025年1月15日
若槻

1/18㈯~1/31㈮ ※火曜休館

2023年 ドイツ=ジョージア合作 1時間25分 

配給:ムヴィオラ

監督・製作・脚本:ファイト・ヘルマー

製作:ツィアコ・アベサゼ / ノシュレ・チュハイゼ

撮影:ゴガ・デブダリアニ

美術:バチョ・マハラゼ

編集:イオルダニス・カライサリディス / モリッツ・ガイザー / ニコロズ・グルア

音楽:マルコム・アリソン / ソーレイ・ステファンスドッティル

出演:マチルデ・イルマン / ニニ・ソセリア / ズカ・パプアシビリ / ニアラ・チチナゼ / バチャガン・パポビアン / ルカ・ツェツクラゼ / エレネ・シャバゼ / ダレジャン・ゲペリザ / ニノ・パチコリア / ペリデ・カランディア

言葉がなくてもこんなに伝わるなんて

 物語の冒頭は、古くからのゴンドラの搭乗員の葬儀のワンシーンから始まります。ゴンドラは弔いの黒い布をまとい、棺を乗せて麓まで静かに運びます。その様子を見上げる村人たちは、ある者は悲しみの歌を口ずさみ、またある者は静かにその姿を見送りました。それは単なる悲しみだけではなく、彼らの日々の生活に根付いた、故人への感謝を感じさせる、温かな見送りの光景です。

 葬儀という特別な場面でも活躍するゴンドラは、日常の中で村人たちの暮らしを支える重要な交通手段でもあります。

 そんなゴンドラの新しい添乗員として村にやってきたのは、鞄一つで現れた娘、イヴァ。村人たちは見知らぬ存在である彼女に心を開くまで時間がかかりますが、先輩搭乗員のニノは彼女を温かく迎え入れます。2台のゴンドラが中間地点ですれ違う際、ニノに敬礼を送るのが、イヴァにとって一日の中でもほっとできる瞬間でした。徐々に仕事に慣れ、彼女の日常も少しずつ村に馴染んでいきます。

 だんだんと仕事に慣れてきたイヴァとニノはより楽しく勤務できるようにある工夫を仕掛けます。彼女たちが巻き起こすお茶目な騒動に思わず笑ってしまうことでしょう。

 映画の主役でもあるゴンドラは、ジョージア(旧グルジア)南部、小コーカサス山脈の西にあるフロという小さな村に実在するゴンドラが使われています。「ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラ」とも言われ、途中に支柱がなく、風が強い日は大きく揺れることも。

 ゴンドラは数年前に新車体に交代したため、映画の中に残されたかつてのゴンドラの姿は、古き良き日々の記憶を伝える貴重な記録となっています。

 監督のヘルマー氏は、この作品について次のように語っています。

 「世界各国の映画祭に行くと、悲劇や重い社会問題を見つめる映画が多くあります。そういう映画を否定しませんし、とても重要だと思っています。が、一方で、人生には少ないながらも素晴らしい瞬間があるのです。多くはないかもしれなくても、幸福な瞬間はあるのです。それを伝えるために、私の映画は、ある種のハッピーエンドでありたいのです。」

 ジョージアの美しい風景とともにほんわかとした雰囲気に包まれた本作をぜひ当劇場でご鑑賞ください。(岩船暢子)

《上映時間》
1/18㈯~1/24㈮ 〇10:00~11:35 ※1/21㈫休館
1/25㈯~1/31㈮ 〇12:30~14:05 ※1/28㈫休館