公演初日まで1週間となった1月18日、通しリハーサルが公開された。会場はりゅーとぴあ・スタジオB。この100席程度のスタジオ空間に置かれた白い「箱」が今回の舞台だ。両脇も天井も塞がれ、演者は壁の低い位置にある四角い穴を、塞いでいる壁を開けて這うようにして出入りする。
ここで演じられた「R.O.O.M.」は、新しいシーズンの新しいNoism1を実感させる、高い熱量を感じられるものだった。次々に繰り広げられる様々な動きとノイズとも感じられる音の切れ端のような音楽で、考える余裕は与えられず、ただ空間に浸る。ぞくり、とする瞬間が何度もあった。
この作品ではトゥシューズで踊られるパートもあり、天井で塞がれた空間での動きが新鮮だ。また井関佐和子のソロ、デュオも期待に違わず魅力的で、ふとした時の肩から腕の描く線の美しさなどに息を呑んだ。井関の存在が、他の若い舞踊家たちのエネルギーを一つにまとめ、作品の力にしているようにも感じられた。
リハーサル終了後、芸術監督金森穣の囲み取材が行われた。
この作品は「箱」という空間をとっかかりに、作品を作るという行為自体をある種の実験として作品化したもの、舞台芸術もともすれば既存のものをなぞる繰り返しになってしまうので、リスクを伴っても新しい実験を続けて、未来に新しい発見を残していかないと、という。そしてこの作品では人間を文学的ではなく、理数的にとらえていて、身体の構造や、身体と身体がそこにあることによって生まれる熱量や質量に興味があり、ある文学作品から受けるメッセージから人間を考えるというのとは入射角が違うとも。
また今シーズンから新しく加わったメンバーによってNoism1が国際化したことによる作品への影響についても質問が相次いだが、金森は、人間の身体は各国共通で身体で表現することには国境はないが、作品を作り上げるという日々の活動の中では、文化の違いによってコミュニケーションの取り方なども違うので、初めのうちはメンバー同士で戸惑いもあったと語った。
この日のリハーサルの完成度については、空間設営・照明などがまだということを含めて6割程度とのことなので、本公演がどのようなものになるのか期待が膨らむ。だが、この作品は演じられることで完成するのではなく、観客が作品を体験することによって、その人の脳内に想起されるものが重要なのだ、という。そのために用意した「圧倒的な情報量」に自信を深めていることが、金森の不敵な笑みから伝わってきた。
今回の公演では同じ空間で金森穣と井関佐和子によるデュオ作品「鏡の中の鏡」も同時上演される。こちらも間違いなく、見応えのある作品になるはずだ。
15年目となるこのシーズンも、Noismが新潟にある幸せを噛みしめながら、存分に楽しみたいと思う。
(月刊ウインド編集部 松井まゆみ)
※シネ・ウインドでは現在、上映前の予告編と一緒に、実験舞踊vol.1「R.O.O.M.」の案内(予告動画)を流しています。
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Noism1 新作公演 実験舞踊vol.1 「R.O.O.M.」/「鏡の中の鏡」
新潟公演
●2019.1.25(金)19:00/1.26(土)17:00/1.27(日)15:00/1.31(木)19:00/2.1(金)19:00/2.3(日)15:00/2.4(月)19:00/2.9(土)17:00/2.10(日)15:00/2.11(月祝)15:00/2.15(金)19:00/2.16(土)17:00/2.17(日)15:00
※全13回
※1/25~27の前売券は完売(1/18現在)
※終演後に予定されていたアフタートークは全日中止。代わりに、3/3(日)16:30~、特別アフタートークが開催されます。
アフタートークについて → https://noism.jp/npe/n1_room_mirror_talk/
●会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈スタジオB〉
●入場料:
一般 4,000円/U25 3,200円(入場整理番号付自由席)
*U25=25歳以下対象・入場時要身分証。N-PACmate等他の割引と併用可能
●取扱い:
りゅーとぴあ(窓口・電話・オンライン)
チケット専用ダイヤル 025-224-5521(11:00-19:00、休館日除く)
オンライン・チケット http://www.ticket.ne.jp/ryutopiaticket/
イープラス http://eplus.jp/(PC・MB共通)
★★★
*実験舞踊vol.1「R.O.O.M.」
演出振付・空間・照明:金森穣
音楽:cyclo.(ryoji ikeda+carsten nicolai)、他 出演:Noism1
*「鏡の中の鏡」
演出振付・空間・照明:金森穣 出演:井関佐和子、金森穣
●問い合わせ:りゅーとぴあ 電話025-224-5521
Noism公式ウェブサイト www.noism.jp