『新聞記者』『余命10年』『ヤクザと家族』など数々のヒット作を手掛けてきた藤井道人監督。当館とは『青の帰り道』で初めて来館されて以来、シネ・ウインド会員で構成された藤井監督のファン有志〈新潟藤井組〉との交流など大変売れっ子監督でありながらいつも応援いただいているありがたいお方です。このたび監督作品『青の帰り道』『青春18×2 君へと続く道』そしてNetflix独占配信作品『パレード』特別上映にあわせ、2年ぶりの藤井監督来館&トークが実現しました。当日の模様をご報告します。
★藤井道人監督トーク開催日程★
2024年8月11日(日)『青春18×2 君へと続く道』上映後
2024年8月11日(日)『パレード』上映後
2024年8月12日(月祝)『青春18×2 君へと続く道』上映前
8/11『青春18×2 君へと続く道』上映後のトーク
―(司会)この映画を撮るきっかけについて教えてください。
僕自身、台湾にルーツがあって、二十代でまだ自分の撮りたい映画に出会えていない時に、日本にオレの居場所はないと思って、台湾に留学して、台湾のプロデューサーに会いに行って、チャンスをくださいと言ったのが、今回のプロデューサーのロジャー(ロジャー・ファン)との出会いなんですけど、その時は結局ご縁がなくて、でもその後自分が『新聞記者』という映画で高雄映画祭という台湾の映画祭に行った時に、『新聞記者』を観たロジャーから「あの時来ていたキミ、こんな映画監督だったんだ」「何個か企画を考えてるんだよね」という中に『青春18×2』があって、「あ、ぼくがちょうどこの監督やる頃、36っすね」、「ぜひやらしてください」と企画開発が始まりました。
―司会進行に自信がないので、(笑) 事前にSNSで募集した監督への質問の中から、進めさせていただきたいと思います。
(質問票から)ジミーが挫折して実家に向かい電車から降り立つシーンでニューバランスのスニーカーがアップになります。日本へ行き旅を始める時は紐を結ぶ靴がアップになります。靴に対するこだわりと思いがあれば教えて下さい。
特にないっちゃないんですが…、僕、靴紐がだいっきらいで、自分の靴も靴紐のやつはほぼ履かないんですけど、旅に出るっていう表現をどういうふうにやろうかと考えた時に、すごい安直なんですけど、ジミーの「道筋」みたいなものを考えたときに「靴」を使ったんだな、と思います。…と、今のはマジメ、表向きの答えなんですけど、電車ってホーム来てからドアが開くまでメッチャ長いんですよ。…ウ~ン、プシュー…、出てくるまでも長いし、トバしたくて、それで「靴」でやりました。
―(質問票から)初めて藤井監督の作品を観たのは『ヤクザと家族』です。映像の美しさとストーリーの切なさに感激しました。『宇宙でいちばんあかるい屋根』『余命10年』『青春~』ともに美しさが抜群なのですが、これだけの美しさを生み出すきっかけなどはあったのでしょうか?私は『青春~』のバイクのシーンが綺麗で凄く好きです。
ありがとうございます。そうですね。多分今まで自分が映画の現体験で観てきた監督って、岩井俊二さんとか~『青春』にも出てきましたけど、あれは僕が好き過ぎて入れたんじゃなくて原作に載っていただけなんですけど~、映画って言われるものはやっぱり「画」だけじゃなくて、俳優の演技だったりストーリーだったり音楽だったり、総合的な最高到達点を全部署で求める職業だと思っているんで。かっこいいミュージックビデオ的な映像が正しいということでは全然なくて、適切な色だったり適切な距離感だったり、ここはカメラが動いていたほうがいい或いは停まっていたほうがいい、というように、一個一個に妥協しないように映像に向き合っているだけ、のような気がしますし…。最近はカメラマンの今村が大層ヒットメーカーというか、売れておりますので、はい、なにか今村先生の「画」という感じになっていますけど。(笑) もともとはふたりでカメラを買って、ぼくがカメラマンをやって、彼が助手をやっている時からずっと一緒なんで。まあ今も、撮影一緒なんですけど、ほぼ一言も口きかないですね。(笑) 二十年くらい一緒にいるんで。
―(質問票から)監督に質問です。オリジナル脚本の映画と、小説など原作のある映画で作品の作り方に違いはありますか?またそれぞれにこだわりがあれば教えていただきたいです。
そうですね。メジャーの映画会社だと、オリジナルをやっていいよ、と云われる機会はほとんどないんですよ。多分、是枝さんと三谷さんぐらいじゃないですかね。あの、簡単にね、簡単というと失礼ですけど(笑)、素敵な感じでオリジナルを手掛けているのは。僕はオリジナルがエライとか原作ものがどうとか、あまり感じたことがなくて、自分が求められている場所に、求められる意味のある原作をいただいたら、それに精一杯ホームランを打てるようにトライするということですし。今年の末に公開する『正体』という映画も、実は流星と一緒に「メメントモリ」という僕のオリジナル企画で、青森から東京へ逃避行する男女の話を書いてたんですよね。それが大層自信のある脚本だったんですけど企画が通らなそうだったんですよ、ちょっと重くて。そんな時ちょうど、TBSから『正体』の本をもらった時に、考えてることは一緒だな、と思って。『正体』という作品を通して、自分がこの世に放ちたいメッセージが届くのなら、そっちをやります!とか、そういうことも全然あります。 ご縁というか、生き物のように、オリジナルだったり、原作ものだったり…。この後上映する『パレード』は、完璧なオリジナルというか、ひとさまにお願いされないで書いた、『デイアンドナイト』ぶりの、久しぶりのオリジナルです。
―(質問票から)監督のキャスティングに毎度感激しております。(特にチンピラ役)
そこでお聞きしたいのですが、過去の作品のキャラクターで、苦手だったり理解出来ない役はありましたか? 可能であれば作品名と役名を教えていただきたいです。
いい意味でわからなかったのは『デイアンドナイト』の奈々、~清原さんにお願いしたんですけど。フツウに最初わからなかったのは『新聞記者』。『新聞記者』の時は、これだけ白髪が増えて勉強したことなどなかったし。ウンギョンさん演じるほうも、桃李くん演じるほうも、役と自分が乖離しすぎているところに、どういうふうにアプローチしていけばいいんだろう、とか、すごく禿げそうになったのは『新聞記者』ですかね。(笑) 理解できないキャラとかは忘れちゃいますね、ドラマとかやっていると、何個かあったと思うんですが…、まあでも、「次いこう!」みたいな感じでやっていましたね。(笑)
―(質問票から)映画「正体」とても楽しみにしています。最近の流星さんの様子など、とっておきエピソードあれば教えて下さい。
最近ずっと会ってないんですけど、ぼくもずっと地方に行っていて、彼もずっと撮影中なんで全然会えてないんですが、「2時間押し」、みたいなボソっとしゃべるアイツの5秒くらいの動画の後に、「こっちは終わった」とか動画を送りあっていて。 岡田准一さんと今撮ってるんですが、「こっちにも出てよ」みたいに岡田さんが混じってきて、「大河でてください!」とあいつが返して、ビデオ交換日記みたいなことをやっていて。(笑) 大変そうっすねえ、俳優は大変だなあ、と思います。
―(会場から)清原さんの「どんなに苦しくてもがんばらなきゃいけない」というセリフで涙がこぼれてきました。清原さんと3度目のタッグということで、前作前々作も拝見させていただいたんですが、清原さんを、女優さんとして、監督はどういうところを信頼されているか、どういうところが好きか、ということがあれば、教えてください。
そうですね。齢は離れていても精神年齢はほぼ同じくらいな、(笑) すごくオトナな女性なんですよね。『青春~』は、自分にとってはアジア映画第一本目だから、その船に一緒に乗りませんか、みたいな感じで言って、即答で「やります」と言ってくれたんですが、その時にひとこと言われたんですが、「いま、藤井さんがやってほしい私は、こういう役なんですね」って言われて、なんかすごく恥ずかしくなるじゃん!(笑) うん、でもすごいかわいいですよね、今回のアミ。もちろんぼくがああいう女性が憧れで好きなんだろうな、ということがありますが…。言い方を間違えて、彼女を怒らせてしまったのが、「いや、今回のアミ、めちゃくちゃいいよね」って言ったら、(清原)果耶ちゃんここ(近く)にいて、「ん、ごめんなさい、それはどういうことですか。本体、横にいます」(笑) 綺麗すぎて、15歳の時からみているから、オトナになりすぎて、あんまり直視できないんですが…。すごい・・変わってないんですよね、おサムライさんみたいな女優さんだし。今でもいちばん緊張しますね。ご一緒するときは。
―(会場から)劇中に出てくるヘアピンカーブのシーンが全部とても好きなんですが、あれはやっぱり、GoogleMapで見つけられたんですか? (笑) それと、あそこを何度も使っている意図があったら、教えてください。
ヘアピンカーブ・・っていうのは・・(質問者「バイクでクルクルまわる、きれいな街の中の」)ああ、あれって日本にはあまりない景色ではあるんですけれど…、今回って時間というものがすごく意味のある映画だなあと思っていて、あれは、時計回りで走っていて、(会場から「ああ」の声) 二人で走っている時と一人で走っている時を同じ構図でとったり、ああいうのはジコマンで…。(質問者「とても素敵だったと思います。ありがとうございます」)
―(司会)言われてみればそうですよね。
どっちだっけな、あれは、半時計にしたんだっけかな…。時間が戻っていくということで。基本、ジミーの十代の頃は上目線っていってこっち(右)をみていて、大人になった時はずっとこっち(左)をみているんですけど。大人になって時間が前に進めない人と、いつまでも未来は時間が進むと思っていた彼の対峙であるんで。それはけっこう徹底してやってたような気がします。
―(会場から)エンディングで歌詞が出るんですが、~そういう映画もあると思うんですが~、今回、敢えてエンディングに歌詞を流された意図があったら教えてください。
エンドクレジットの余韻って、クレジットを観る方もいるし、そこに言葉があったほうがいい方もいるし、でも言葉いらない人は言葉みなきゃいいし、選択をつくって、皆さんそれぞれの余韻をつくってほしい、というのがあります。その中でも、今回「Mr.Children」というすごい意味のある方が主題歌を書き下ろしてくださって、その一つ一つの言葉に、やっぱりぼくはこの映画を最後締めくくる力がすごくあるなと感じて。エンドロールに負けないように映画を作らなきゃ、という感じで、そういう思いで入れています。
―(会場から)今日二回目で、一回目は日本語にも全部字幕が付く映画館だったんで、今日は観て聴いている時間がすごく多かったんですが、冬休みにジミーが「会いにいきたい」と言ったけど(アミが)「来ないで」って言って。 でも、実家に訪れた時に「会いたいなジミー」というアミちゃんの台詞があって、今回すごく耳に残ったんです。「会いたいなジミー」が入ったあとで、すごく切なさが増してしまったんですけど…、「来ないで」って言ったけど「ほんとは会いたかった」ということを敢えて言葉で残すかどうか、入れるか入れないか、そのへんの監督の思いはどうなってますか。
そうですよね…、いや、今回はすごく難しくて、そもそも恋とかの話の時点で若干難易度があがるんですが。言葉が通じない、でも通じ合う感情を撮るとる時に、やっぱり、その言葉というものの意味が、日本語でしゃべってる時の意味と変わるんですよね。「会いたいなジミー」は、多分ほんとにジミーに伝えたかったら中国語で言うと思うし、でも、自分の言葉で言ってるということは、多分、自分の人生の話として彼女は自分にだけ言ってる。そういう言葉の奥行とか、キャッチボールする言葉とそうじゃない言葉の役割というものを、今回脚本を作る上では~向こうの言葉、僕も分からない言葉はけっこうあるし~けっこう苦労したんですけど。そう言ってくださるのは良かったです。ありがとうございます。
8/11『パレード』上映後のトーク
―(司会)『パレード』を上映するにあたって、わたしたちが『パレード』をNetflixで観た時に、これは映画館で上映すべき作品だなあ、と思って、実現しようとした時にホントにたいへんだったんですけど、シネ・ウインドのSTAFFのみなさんと、今日、いらしてくださっているスターサンズの行実(ゆきざね)さんが頑張ってくださいました。(拍手)ありがとうございました。これがきっかけで、全国に広がってくれたらいいなあと、心から思っております。この作品の企画のきっかけをお願いします。
そうですね、多分『パレード』はいちばん語っていないというか、Netflixということもあって語る機会もなかったのですが。実はこれも劇場で観ていただけるのは三度目で、ユーロスペース、仙台、そしてこちらと三か所目なんですね。 この映画をミニシアターでできないかな、ということを考えた時に、いやほんとに予算のかかる監督でございまして、いろいろ折り合いのつかないこともあったりしたのですが、こういう活動をNetflixが許してくれているということも、いい未来が近くに待ってくれているんじゃないかと思っております。まあでも、この『パレード』自体というのは、ぼくのすごく個人的な感情からできた映画で…、ぼくと一緒にずっと映画を作ってきた河村光庸というプロデューサーが急逝して、三日後、四日後くらいですかね、この『パレード』という映画を書き上げて…。やり場のない感情というものは、皆さんにもあるように僕にもあって、僕は生意気なことに、映画に閉じ込めてやる、と思って、自分の悲しみとかやるせない感情とか、きっと自分だけじゃないだろうし、喪失だったりとか前に進めない人とか…。自分にできることは、この『パレード』を書くことだなと思って、これを作りました。なので、すごい素敵な俳優たちが集まってくれたのは、なんかこれも新しい葬式の形なんじゃないか、というぐらいにね、僕は個人的には思っていますし、映画でもらった恩は映画で返す、という思いでこの映画にトライしました。
―(質問票から)美奈子さんの部屋で壁の蝶がとても印象的です。蝶が表すものは何なのか、教えていただきたいと思います。
そうですね、あれは行実のアイディアだったような気もするんですが…。初稿にはたぶん蝶がいなくて、これをエンタティンメントの脚本でやるためには、もっと死のルールとかいろんなものを作ったほうがいいよねという考えももちろんあったし。ただ今回はそういうものじゃない、もっとより抽象的で、ただ一個だけでも自分たちが信じられる拠り所みたいなものをつくりたいという時に、やっぱり生き物は時代と同じように、~輪廻するじゃないですけど~、モチーフとして、蝶というものを選びました。 …すみません、僕にとって六本くらい前の映画なんで。あの蝶の意味も調べたんですよ、あれはなんとかモンシロチョウみたいなやつなんですけど…。
―最後、皆さんびっくりしたと思うんですけど、あの河村さんにそっくりな人、それと一緒に、綾野剛さんも出てきて…
そうですね、こっち(右)の綾野剛にびっくりするより、こっち(左)の河村にびっくりする、という…。(笑) 剛さんもね、気づかなかったという人がいれば嬉しいなと思うんですが、あんな目立つエキストラねえだろ、みたいな。(笑) 剛さんも、ちょうど撮影中だったんですよね、『パレード』にも出てほしかったんですけど、「自分にもできることない?」ということで、あの撮影に急遽来てくれて、みんなが緊張してました。 俳優たちも、森七菜ちゃんや(奥平)大兼からすると、急にベテラン俳優来てエキストラはねえだろ、(笑) みたいな感じで、けっこう緊張されていましたね。
―(質問票から)キャストさんは、撮影中は、食べ物エピソードを話してくださっていましたが、藤井監督はお好きな食べ物とかなにかあるのでしょうか。忙しくて、なんでもいい、とかなのでしょうか。
そうですね、ベース、何でもいいですね。何でもいいんですけど、ご褒美は、カニ、ですね。『パレード』にも出ていた(横浜)流星と、プライベートで一緒に食事したりするんですけど、彼とぼくが頑張った時は、かに道楽に行くという…。(笑) 最近、京都で一緒にゴハン食べたんですよ。何食べたい? と言って、カニ! となって。京都のかに料理屋って高いんですよね…。 高ぇ、と思って、まぁいいや二人で久しぶりに会うし、と思って、そしたら奢ってくれたんですよ。(「おぉ~」の声)「『青春~』ヒットおめでとう!」って言ってくれて。ハイ、というエピソードがあります。(笑)
―(質問票から)人物像の設定や生きている時のエピソードで一番悩んだキャラクターは誰ですか?
そうですね、さっき、行実とかにも聞いて、誰かいる?と言っていたんですが。アキラだけは、なにか自分を投影している部分もあるし、アキラに対してどういうブックエンドをつけようかということだったり、書き換えた部分があったりしました。でんでんさんとのエピソードは初稿には入っていなくて。それはそれでぼくの中では好きだったんですが、坂口くんというぼくの大切な仲間にアキラをやってもらうにあたって、彼はどういう人間なんだろうと彫っていく中で、役ができたのかなあ、と。さっき質問にもあった、共感できないとか理解できないキャラクターいますかって聞かれた時に『新聞記者』がすごく難しかったと答えたのですが、『パレード』は基本、事実とか、自分の得てきたエピソードを基に構築されているので、あまり難しいのはなかったです。
―(会場から)冒頭の瓦礫のシーンなんですが、あれがすごく衝撃で、完成された美しいものを作るよりも、答えのない瓦礫を表現することのほうがすごく難しいんじゃないかな、と観ていて感じたんですが、あれはどこまでホンモノで、CGかなにか使っているのか、お聞かせいただけたら、と思います。
ありがとうございます。素材撮りをして、何もない海にあれを作るんですね。なので、基本はCGになります。ただ本当に、最後の最後の最後までやっていたシーンはあそこです。その震災のショックというものを、ドキュメンタリー的に見せることが目的なんじゃなくて、自分たちが人生で積み上げてきたものとか、大切にしてきたものが無くなってしまう、という感情みたいなものが、波だったり、泡だったり、そういうもので伝わればいい。そういう僕の抽象的なオーダーをCGチームが頑張ってやってくれて、ああいう形になりました。光を探す話ではあるんですが、僕の十何年答えの出せなかったものを、この映画にはしっかりこめたいな、と思いました。
―(会場から)寺島しのぶさんの、あの最後に、お孫さんが誕生して成長した姿で登場したんですけど、あの少女が「グー」ってしてたんで、もしかしたらマイケルさんが転移したのかと。(笑) なにかそういう感じのイメージをもったんですが。
そうですね。あれは、マイケルではないけど、しのぶさんの演じるカオリさんという方が、本人がそのまま入ったわけじゃないけど、なにかこう、断片的なものなのか、存在としての一部なのか。あの瞬間がもしかしたら、ナナにしか見えてないものかもしれない、とか。僕はどれでもいいと思いました。ただ完全にあの中にしのぶさんが入っていたらやだな、という思いだけはあったんですけど。 (笑) でも、何か、そういうものがあってもいいんじゃない、という思いで。
―日本一忙しい映画監督ですが、もうすぐお誕生日で三十八歳、まだまだお若いですが、齢取ったなア、とか、周囲の若い人たちと世代の違いを感じることはありますか?
ありますあります。いま「イクサガミ」というドラマを作ってるんですが、年下が増えたのと、今まではチャレンジャーだったのが、ある種チェンジャーでいてほしい、というようなオーダーが増えたんですね。だから、最近すごくイヤなのが、みんなオレのことをググってからオレに会いに来てるんですよ。(笑) 映画を観てくれて、というのも勿論あるんですけど。 だからいつも「思ってたより優しいんですね」とか「思ってたより~」みたいな、どういう先入観? (笑) 藤井組はヤバイ、藤井組はタイヘンとかいうウワサが業界を席巻しているらしく、まあ、ほぼあってるんですけど。(笑) やっぱりそうなると、後輩たちとかがすごく楽しそうにしゃべっている時に、監督車が到着して、おはようございまーす、って降りた瞬間にシーンってなるんですよ。(笑) なんかああいう時すごく哀しみを感じます…。(笑) でもその子たちが、自分たちがやっていることとか、岡田さんと自分がやろうとしていることを、目をキラキラ輝かせてチャレンジしていく姿勢とかをみて、ここから彼らの時代が始まるんだなということを、上から見れるようになった、というとアレですけど、自分も次のステージに行けるように頑張らなきゃな、と、最近は感じますね。
(司会「まだまだこれからですよ」)
フッーって感じで、ツカレがとれない。(笑) 最近オレ、漢方とかに頼りすぎちゃって、地方ロケに行くと、絶対に、ご当地の薬局屋ってあるんですよ。 たっかいんですけど、しかもあれたいして効かない。(笑) 何で効かないんだろうと思いますが、そういうので、気を紛らせたりしています。
<ここで、サプライズの誕生日ケーキ登場。みなで、ハッピーバースディを歌い、ケーキのろうそくの火を監督が吹き消す>
―では、最後に監督から一言、お願いします。
短い時間でしたがありがとうございます。二年前にもここに来させていただいて、三度目…(司会「四度目」)…四度目か、(笑) になるんですけど。ほんとに市民のチームの皆様の団結によって自分が生かされてるんだということを強く感じます。映画は観ていただけたらもう、観客の皆さまのもので、そこに向かうまで、誠実に映画を作っているんですけど、ご挨拶をしっかりできれば、という機会が年々減っていて、そういう環境を与えてくださった、新潟藤井組のみなさま、シネ・ウインドのみなさま、そして観客のみなさまに感謝申し上げます。僕はこれからもいい映画を作り続けたいな、という希望はあるんですが、それが叶うかどうかはわかりません、人生ですので。ただ、気負いせずに、時代とか人とかに向き合って映画を作っていけたらいいなと思います。精進いたしますので、皆様も新作とか楽しみにしていただけたらいいな、と思います。
11月29日に新作『正体』というのが公開になるんですけど、それも、非常に面白い映画であります。ちょっとだけジョークを言いますと、藤井道人と横浜流星が組むとあまりヒットしない、(笑) というジンクスを破らないとヤバイ、テレビ局とか入れてますんで。 (笑) 宣伝とかも必死に頑張っていきますので、皆様も、お力添えいただけたらな、と思っております。今日は、短い時間でしたが、ありがとうございました。
8/12『青春18×2 君へと続く道』上映前のトーク
藤井道人と申します。今日は『青春18×2』を観にきてくださって、ありがとうございます。撮影でも、津南だったり長岡だったり、新潟の皆様にはお世話になりました。 自分にとっては、アジアに出ていくんだ、という覚悟を持って挑んだ作品でした。数時間後には東京で仕事で、すぐ戻らないといけないんですけど、今日は短い時間ですが、宜しくお願いします。
―昨日もお話しいただいたんですが、本作の撮影のきっかけというのは。
二十代の頃はインディーズで、全然芽が出なくて、日本に俺の居場所はないんじゃないかと、台湾に行ったり、タイに行ったり、中国に行ったり、自分を使ってほしいと営業してた時にこの作品に出会ったんですけど、その時は、「はい、じゃあ君ここで監督やって」とそんなふうになるわけではなくて、日本に帰ってきて『青の帰り道』からコツコツやってきて、台湾の人たちにも自分の作品が届くようになって、この作品をいただいた、という感じですね。今回の作品でクレジットの中にチャン・チェンという俳優がプロデューサーに名を連ねているんですが、彼は『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』とか素晴らしい作品に沢山出ているんですけど。 やっぱり、チャン・チェンと映画を作れるというのは、映画小僧にとっては夢みたいな話で。台湾に行くと、日本映画のような台湾映画、日本人からみても、邦画のようなアジア映画、と言ってくださるのは、チャン・チェンさんのおかげだな、と。 翻訳が固くなっちゃったりとか、セリフが日本語らしくないあるいは台湾語中国語らしくないところは、全部チャン・チェンさんが直してくれて。そういうチームワークを、あのチャン・チェンとできた、というのはすごい自分の中ではでっかい作業でした。
―津南ロケについてなんですが、印象に残っていることはありますか。
印象に残ってることは、ドローンが落ちた、ということ。(笑) ランタンの動きが不規則なので、風に流されて、ドローンのほうにきちゃって、ドローンが落ちて、というたいへんなことがありながらも、三百人くらいエキストラやボランティアの人が集まってくださって、すごい、あの人たちの前で「ありがとうございました」という時がいちばん緊張したな、(笑) ということで。ああいう場所もあるんだ、と知って、もともとホン書いてた時は、台湾パートだけはランタンエピソード書いてたんですが、日本にもあるよ、東北とか北陸にもあるよって聞いて、えっとなった時に、それが津南のランタンフェスティバルというのがあるって聞いて。何度も行って、毎回吹雪なんですよ。マジ飛ばないでしょ、こんなところと思っていたのが、撮影の時は晴れて、よいシーンが撮れました。
―これから藤井監督は、海外での撮影に力を入れたい、というのはありますか。
なんか一人で海外に行って、有名な映画を作りたいという気持ちはあまりなくて、僕ら、BABEL LABELという集団も、来年で十五年になるんですけど、大学の同級生たちとサークルのノリで始めた会社で、全然未熟者たちの集まりなんですけど、その仲間たちと、なんか「日本編は終了」、「次はアジア編」、「ヨーロッパ行くか」みたいな、海外と映画言語で対話できる職業に出会えたので、臆さず、日本にいると「事情/都合/組織/カネ」とか「レビューが怖い」とか、そういう人生やだなと、自分が自分で納得する場所に行きたいし、挑戦をしたい、という思いがあるのと、自分たちがこうやってのさばっていると、若い監督たちがずっとジャマだなあと思ってるだろうし、とか、若い監督たちの育成の場とか、チャンスを自分がもらったように、循環していきたいという意味で、もうちょっと挑戦していきたいな、と思ってますし。 そういう一環でというとアレなんですけど、新潟の皆様には、もう5年前ぐらいから2019年から呼んで下さって、観客の皆さんとトークしたりする機会を与えてくださって、そういう時間は自分にとって特別なので、これからも続けていきたいな、と考えております。(拍手)
―ありがとうございます。皆さんがここの証人ですから。宜しくお願いします。(拍手)
全然来なくなったりして。(笑)
―許されないですよ。(笑)
来ます来ます。(笑)