【レポート】
シネ・ウインド35周年祭特別企画
シンポジウム SAVE THE NIIGATA CULTURE ~新型ウイルス禍の新潟の文化~
2020年2020年11月23日(月・祝)10:30~11:30
〇会場 新潟・市民映画館シネ・ウインド(新潟市中央区八千代2-1-1)
2020年初頭からの新型ウイルス感染拡大状況のなか、全国の小劇場・ライブハウス・映画館が苦境に立たされました。その時、それぞれの現場はどのような状況だったのか、どのように対処したのか、そして、これからどうしていくのか。演劇・音楽・映画の“場”を運営する3人が語り合いました。
多くの皆さんからご寄付をいただいたシネ・ウインドとして、できることは何かを考え、他ジャンルの実情や課題、展望などを知り今後の交流へとつながることを期して企画したシンポジウム。その様子をご紹介します。
〇パネラー
●新潟古町えんとつシアター 舞台芸術監督兼支配人 逸見友哉
●新潟 LIVE HALL GOLDEN PIGS 店長 石塚 翔
●新潟・市民映画館シネ・ウインド 支配人 井上経久
○司会 月刊ウインド編集部 制作長/新潟・市民映画館鑑賞会 会長 市川明美
何があって、どう大変だったか
市川◆月刊ウインド11月号で「新型ウイルス禍の日々」という特集を組みました。シンポジウムはその延長線上です。まずは、新型ウイルス感染拡大のなか、これまでの状況を振り返り、どんなことがあってどう大変だったか、教えていただけますか。
井上◆2020年2月下旬に新潟で初めての感染者が出てから、観客が3月で見込みの6割くらい、4月以降は週ごとに減って、4月末には2割ほどになっていました。4月22日から15日間閉館しました。その頃から、ほかの映画館や映画関係者から支援の動きが出て、私たちも4月20日から「明日のため募金」をはじめ、多くの方から支援をいただき、本当にありがたかったです。様々な支援や募金を受けました。新潟は比較的短い閉館で済み、5月7日から再開しました。それまでのような状態ではなく、最初は64席のところを20席まで減らし、全席予約制。その後、少しずつ緩和させながら、今に至っています。9月19日からすべての席を座れるようにしましたが、食事はお断りしています。これからもしばらくはこの体制でいくと思います。
逸見◆3月から劇場予約のキャンセルが続き、リスケ(スケジュールの立て直し)が増えました。4月中旬くらいから完全に閉館状態。それが5月いっぱい続きまして、その間にリスケしていた団体も全部キャンセルになりました。閉館状態の間に様々なガイドラインを調べて感染予防対策をしたのですが、6月からも開店休業状態が続いて、利用率は昨年の10分の1まで落ち込み、今もそれが続いています。まだ来年(2021年)の見通しが立たないという、かなり厳しい状態です。
石塚◆地元のアーティストからメジャーまでいろいろ使ってもらっているんですが、2月末くらいから、最初はメジャーさんが来られなくなりました。うちはホールが3つあって、そこで月に50から60本公演があるんですが、それが2月末からキャンセルや延期が入ってきて、3月は半分くらいに減りました。大阪のライブハウスでクラスターが発生したというニュースが流れてから、キャンセルが増えましたね。4月中頃から5月末まで営業を自粛し、公演はまったくやっていませんでした。緊急事態宣言が解除されてから、県外のバンドさんは来られないので地元のバンドさんにやってもらって、6月1日から再開しました。全国でもかなり早い方でした。その時はキャパ150のブラックステージを人数制限10人にしてやりました。椅子を並べて、距離をとり、受付にアクリル板をつけ、ステージにはビニールカーテンをして、完全対策で臨みました。検温、アルコール消毒、問診票も書いてもらって再開したんですけど、やっぱりなかなか。お客さんが10人も来ないようなイベントばっかりだったので、営業はしているんですけど、売り上げは上がらず。その状態が今もずっと続いてまして、県外からのバンドさんはほとんど来てないです。地元で活動しているコピーバンドとか高校生のバンドとかにイベントをやってもらって、今もなお、という感じで、そういう状態が続いています。
市川◆シネ・ウインドもGOLDEN PIGSさんも、新潟は比較的営業再開が早いほうだったようですね。
井上◆首都圏や関西圏に比べれば、新潟は感染者数が少ないというのが大きいと思います。また、シネ・ウインドの場合でいうと、皆さんからの支援が本当にたくさん寄せられたということがあります。大変ありがたかったですし、続けなければという気持ちになりました。休館中も常に、再開を目指して活動していました。
石塚◆やるしかなかった。音楽をやってる方たちって、それでご飯を食べてる方たちもいるんですけど、趣味として、音楽を楽しみに毎日仕事しているという人も多いので、どうしてもやりたい、という声は多かったですね。うちが営業再開を目指したというよりも、地元の子たちのライブしたいという思いが強かったので、なんとか再開しようといろいろ対策をしてやった感じですね。
営業再開後は
市川◆営業再開して、反響やクレームはありましたか。
石塚◆ありました。報道にも取り上げられたりしたし、密集することが楽しい、みたいなのがライブハウスのイメージだったので。7月頃、ある県外のアーティストが来る時に、300キャパのステージが事前に完売していたんですが、払い戻してキャパを6分の1の50人にし、2ステージにして開催したんです。SNSでライブの情報を流したら、この時期に何やっているんだという意見がありました。もちろん感染対策はばっちりやったんですが、その辺は見えないところなので。
逸見◆イベントを大っぴらに宣伝しづらいという風潮はありましたね。どうしてもよく思われない方はいらっしゃる。それは当然のことだと思いますが、我々はそういうイベントをやっていかないと生活ができないというのもあるし。誰かがやってみて、これは安全だということを見せていかないと、今後どんどんイベントをやらないでおこうという風潮になってしまうのかなと。8月に「お化け屋敷」を開催したんですが、その時も感染症対策をしっかりやって無事にできたよと皆様にアピールできたので、これからもしっかり対策しつつ、イベントを仕掛けていきたいと思います。
感染症対策の難しさ
市川◆打ち合わせ時に、政府による感染症対策のガイドラインが映画館・劇場・ライブハウスでそれぞれ違っていて、それがどんどん更新されてゆく、調べるのも大変だという話がありました。特に困っている点などはありますか。
井上◆休館後の営業再開時は会員のみ、事前予約制にしたのですが、その後は予約がなくてもご覧いただけるということがなかなか浸透せず、今でもよく予約についての問い合わせをいただきます。周知の難しさを感じます。
市川◆シネ・ウインドは毎年11月23日に万代シルバーホテルで周年祭パーティーを開催していました。34年間続けていたのですが、今年は中止にし、今日はその代わりに来場者プレゼントとして「紅白まんじゅう」を用意しました。飲食を伴うイベントはやはりまだ難しいのではないかと思います。様々なガイドラインの中で、特に大変な点はどんなところでしょう。ライブハウスは飲食というか飲酒が伴うことが多いので大変ではないですか。
石塚◆昔のライブハウスはお酒を飲んで音楽を楽しむ方が多かったのですが、今は若い世代はあまりお酒を飲まなかったりするし、車で来る人も多いので、飲酒に関してはあまり問題はないです。ガイドラインに沿って対策しているのですが、それが来場するお客様に伝わりきらない点はありますね。いろんな考え方があるので、そこでの葛藤もあります。こちらの指示を守らない方も多くて、そこが一番難しかったですね。ひとり守らない人がいると、営業停止になってしまう可能性があるので…。ライブハウスは固定席がないので、ソーシャルディスタンスを取ってくださいと案内しても、動いてしまったり、興奮して声を張り上げてしまったり。それがライブの楽しみでもあったので、対応に苦慮しています。仕方なくちょっと声をかけさせてもらったりすることがあるのですが、注意されるとお客様も面白くないだろうし、心苦しいです。
逸見◆うちの場合だと、ご来場者様の個人情報をお聞きしなくてはならないというのがかなり手間で、しんどかったです。演劇やお笑いライブを気軽に見に来てもらいたいという思いがあるのに、いちいち名前や連絡先を受付で記載してもらわなくてはならない。それが敷居を上げている。でもそのひと手間をしないと、万が一が起こった時に対処ができなくなってしまうので。
市川◆東京の劇場で感染が広まった時など、新潟にも影響がありましたか?
逸見◆きっと業界ごとにあると思うのですが、劇場で感染者が出ると演劇ってやばいな、とか、ライブハウスで出るとライブ行くのやばいな、みたいな意識が。ちゃんと個々を見てほしいなと思います。それぞれの会場がどんな対策をしているのかを見て判断してもらいたい。情報に踊らされないことが大事だと思います。
市川◆どの会場にも固定ファンがいると思います。今度の新型ウイルス禍でそういった方々が戻ってないということがあるように見受けられます
井上◆シネ・ウインドは高齢のお客様も多いのですが、家族から来場をひかえた方がいいんじゃないかと、言われた方もおられるようです。
石塚◆地元のコピーバンドや大学の軽音楽部の演奏会など、ライブハウスでは様々なイベントが開催されています。ライブハウスに足を運んだことのない方からすると、いつもパンパンにお客さんが入ってもみくちゃになるというイメージが強いようで…。だいぶ落ち着きましたが、自粛期には、ライブハウスに来たことのない親御さんから「とにかく行くな!」と言われてバンド活動ができないという子たちが多かったですね。
市川◆石塚さんには月刊ウインド11月号に原稿を寄せていただいたんですが、ライブハウスは「受け入れる力のある“家”」だという、とてもいい文章でした。ぜひ皆さんに読んでいただきたいです。
次にまた使ってくれれば
逸見◆うちの場合は、来場者様よりも利用者様がためらっている状態で。利用しづらいというか。確かに、入場者制限をすると採算が取れなくなるなどの問題があります。中には赤字でもやりたいという人もいるにはいますが、せめてトントンになるような環境であってほしい。新潟市が文化施設の会場費を半額出しますよという施策をしていて、うちもその文化施設の対象になっています。会場費が半額になれば、お客様の数が半分でもなんとか採算が合うと思うのですが、申請の書類作りも手間がかかるので、躊躇されてる人も多いように感じます。あと、利用にはキャンセル料の規定がありまして、例えば1ヵ月前なら100%なのですが、今この状況だとキャンセル料は取れないですね。直前にバタバタとキャンセルになることが多くて。泣き寝入りというか、次にまた使ってくれれば、と思うしかないです。
石塚◆うちもホントに同じような状態です。普段はキャンセル料があるんですが、この状況では取れなかったですね。落ち着いたらまた使ってくださいと、延期という形をとったり。ライブハウスも大変ですが、ミュージシャンも大変な状況なので。音楽でご飯を食べてる方も、例えばそこでキャンセル料を取ったことでそのバンドがもうやっていけなくて解散してしまう可能性もあったので、お互いにここは耐え時だよねと話をしながら。バンドもライブハウスがないとやる場所がないので、半額でも払わせてくださいという方もいたんですけど、いや、次につなげてくださいと、いろんなバンドさんとかなり細かく話をしましたね。
横のつながりとナマの魅力
市川◆新型ウイルス禍を受け、様々なジャンルで様々な活動が繰り広げられました。例えば音楽なら「SaveOurSpace」、映画なら「SAVE the CINEMA」、演劇なら「演劇緊急支援プロジェクト」など(他にもいろいろあります)。そして、それぞれでクラウドファンディングも実施され、また、地方発の動きも活発でした。シネ・ウインドはわりと早期に独自の募金活動「明日のため募金~対新型ウイルスプロジェクト」を実施。たくさんのご支援に心から感謝しております。音楽や演劇の分野ではどうですか。
石塚◆新潟駅前のライブハウスCLUB RIVERSTさんとWネームでTシャツを作りました。駅前と古町でライブハウス同士、ライバルみたいなイメージもあったんですけど、なくしちゃいけないよね、ここで手をつながなかったらいつつなぐんだ、と話をして。地元の方や県外の方からもご購入いただき、ありがたかったです。もともと仲は良かったんですけど、一緒に何かするということはこれまでなかったので、新型ウイルス禍が落ち着いたらコラボイベントをやろうなんて話も出てます。会う機会も増えて、今回のことがきっかけでつながれたなということはあります。
逸見◆3年ほど前に「小劇場ネットワーク」というものができたのですが、今回、そこが率先して動き、クラウドファンディングで資金調達をしていただきました。全国どこの地域の小劇場もきびしい状況で、日々意見交換をしています。そういうつながりはできたのですが、ただ、ネット上だけで、直接会っていないので、個々の温度感、深刻さの度合いみたいなのが伝わりにくいのが残念です。いまは演劇やお笑いもネットでの配信がかなり多くなってきたのですが、あくまでライブでやりたくて我々はこの仕事に就いているので、お客様にとって選択肢が増えるのはいいことだと思いますが、ライブであることの魅力は忘れないでいただきたいなと思っています。
市川◆私もナマの舞台が好きなので、すごくわかります。映画館もオンラインでの監督・ゲストの舞台挨拶が増えましたね。
井上◆これからまだしばらくは続くと思います。この状況下で発見があったとすればそれだと思うんですが、ご本人が来られない状況でもオンラインでスクリーン上に監督が登場し、話ができるのは嬉しいですし、その技術が進んだのはよかったと思います。あと、同じ悩みを抱える全国の映画館や映画関係者と交流して、仲良くなれたのもよかったです。
市川◆皆さん、新型ウイルス禍を機に横のつながりが深まったようですね。音楽の世界でも「ネット配信」は増えているのでしょうか。
石塚◆うちはあまり配信はやってないです。月に1回あるかないか。音楽は、やっぱりナマ演奏には勝てないかな、と。僕もそれが好きでライブハウスをやっているので。(客席に向かって)ナマのライブはいいですよ~。配信とか少し見たりはしていたんですが、1ヵ月間ライブがまったくない状態で6月1日から営業再開して久々にライブをした時は、ホントに涙が出ました。大きい音で、音の振動も伝わって。会場にはお客さんが10人いないくらいだったんですが、皆さん、ホントにまたライブできるんだぁみたいな感動があって。配信とかじゃ伝わらないナマの良さがありましたね。これは何としてもライブを続けなきゃという思いになりました。
市川◆私も6月にりゅーとぴあで久し振りにNoismの舞台を見た時はすごく感動して、この感動をより多くの方に味わってもらいたいと思いました。ただ、観劇を怖いと思う人たちの気持ちもすごくわかるので、そこが難しいところ。見に来てと言い難いという話が先ほどもありましたが、それが今私たちの抱えるジレンマですね。今、この会場にいらっしゃる皆さんは、ハードルを一つ飛び越えて、ここに足を運んでいる。でも、来ていない人を責めたりはしない。石塚さんが11月号に書いていらした、その通りです。だけれども、できれば忘れないでいて、いつかいらしていただきたいなと思います。
客席より その1
来場者◆ナマのライブはとても魅力的だと私も感じています。県外のメジャーデビューしていないあるアーティストの大ファンなのですが、新潟でのライブはまだのようです。県外のアーティストを受け入れる基準はあるのですか。
石塚◆基本的には、こちらから提示するというより、使う側からの意見が多いです。メジャーは事務所の判断が大きいですが、インディーズは本人の判断ですね。例えば6月7月に予約が入っていたバンドには、直接本人に電話をして職場や自宅の状況を確認したり、細かく連絡を取りました。基準というよりは個々の話し合いですね。
市川◆新型ウイルス禍の出来事として印象に残っていることのひとつに、3月にシネ・ウインドで開催した「松永天馬殺人事件」上映+舞台挨拶があります。感染症対策への意識がとてもしっかりした方たちで、アーバンギャルドの松永さんがここ(場内)で歌ってくださったんですが、ちゃんとマスクしていて。イベント前は、外見や音楽からちょっと怖そうな人かと思っていたのですが、全然違いました。
客席より その2
来場者◆今日は面白いお話をありがとうございます。今回の騒動で、東京など都市圏から聞こえてくる状況と地元の状況にずいぶん違いがあり、いろいろ感じることも多かったのですが、業界の中でもそういう違いはありますか。
石塚◆全国のライブハウスと交流があり、いろいろ話を聞きました。第3波ということでいまはまた状況が違っているかもしれませんが、少し感染者が落ち着いた頃、もちろん店によっても違いますが、東京は新型コロナのあることが当たり前になり、慣れてきているというような話を聞きました。反対に地方で感染者が少ない地域の方が怖がっちゃって、行くな来るなで演奏活動などはやりづらかったようです。うちは6月でしたが、営業再開が8月末というところも。新潟はちょうどいい都市感なので、両方の間にいるのかな。東京のバンドは来たいというけど、地方のバンドの方が今は無理っていってたり。
井上◆来館する監督さんも、人によってまちまちではありますね。公共交通機関を使わずに車で来る方や、今回は(来館を)見合わせましょうとお話させていただいた方もいます。
市川◆新型ウイルスは人によってホントに感覚が違いますね。その温度差に驚かされます。観客もそう。まだ映画館なんて絶対に行けない、という方もいれば、マスクをして以前と変わらぬ頻度で見に来てくださる方も。
逸見◆先日、りゅーとぴあで公演するために来県した東京の劇団の方に会いましたが、こちらへ来る前に全員PCR検査をして陰性を確認してから来ている。費用や手間がとても大変です。東京の人口密度は新潟と全然違います。マスコミは東京などの感染者数を連日報道していますが、数字に踊らされないようにしたいです。新潟でも、我々もいつ感染するかわからない状況にある。マスクや手洗いで感染予防に努めていても、やっぱり感染者が出てしまうというのが、コロナウイルスの感染力の強さ。もし誰かが感染しても寛容でありたいと思います。
市川◆本当にそうですね。また、心配な時に気兼ねなく受けられるくらい、PCR検査の費用が安価になってもらいたいものです。
今後への意欲
石塚◆今、テレビに出たりして活躍しているメジャーなバンドやミュージシャンにはライブハウス出身者がものすごく多いんです。Mr.Childrenとかスピッツとかもライブハウス育ちです。ゴールデンボンバーさんはよくうちでライブしてくれてました。そういう方たちがライブハウスのためにグッズを作って支援してくれたりして、ありがたかったです。経営は大変なんですけど、ライブハウスをなくしてはいけないとミュージシャンの方々が声を大にして言ってくれて、とても力強かったです。
市川◆ミニシアター・エイド基金のクラウドファンディングには3億円を超える支援が寄せられ、それを分配していただいて、シネ・ウインドも大変助かりました。演劇でも「演劇緊急支援プロジェクト」などがありましたね。第3波がやってきている状況ではありますが、今後の展望を聞かせていただけますか。
逸見◆新型ウイルス禍で、自分の危機管理の甘さを感じました。これまでにも地震とか災害はいろいろあったのに、それに対して備えてなかったために経営の櫓がぐらぐらして続けてゆくのも大変になってしまった。その教訓を踏まえて、運営基盤をしっかりさせるため、先日、株式会社を立ち上げました。今後は会社として劇場を運営していきます。体力も必要になるので、ご利用いただいていた劇団や団体さんが戻ってくるまで続けられるよう資金繰りをして、イチから地盤を固めてやらなくてはいけないと思っています。
市川◆今、この時期に株式会社を立ち上げるとは、本当に前を向いてらっしゃいますね。他にも動きがあるとか。
逸見◆古町モール6番町で大衆演劇などをやってた「古町演芸場」が5月に閉館してしまいました。オーナーさんが取り壊そうかと話をされていて、取り壊すにも1千万近くかかるとか。それだったら、やりたいことがあると相談させていただいたんです。仕掛けてみたいことがある、と。それならやってみろと言っていただきました。簡単に言うと、インターネットカフェとマンガ喫茶などが融合した会員制の交流サロンみたいなものに変えようかと。で、夕方や夜間は1階のステージをイベントスペースとして利用します。今そのためのクラウドファンディングを申請中で、11月末には始められる予定です。どうぞご協力ください。
※「古町をあきらめない!~古町演芸場再生プロジェクト~」として、クラウドファンディング実施中(1/24まで) https://camp-fire.jp/projects/view/351074
市川◆この時期に打って出る逸見さんを、ぜひ応援したいと思います。GOLDEN PIGSさんは何か新しい動きはありますか。
石塚◆ライブハウスはある意味、古き良き文化でもあります。出演するバンドの数はどうしても減ってきているのですが、その中で何ができるか、今考えています。以前は月に200バンドくらい出てました。メンバーが数人ずついるので、出演者だけで月に800人ほどに接します。僕はバンドが好きなので、毎日いっぱい話はするんですけど、その数が今は30から40バンドくらいになってしまった。その、今動いているバンドと一緒に何ができるのか、密に話を進めてます。実際に近づく「密」じゃないですよ(笑)。県外バンドが呼べないなら、地元バンドで何ができるか。地元バンドだとこれまでは「対バン」といって5組くらいが出演する形が多かったんですが、この時期だから逆にワンマンライブやってみようとか、定期的に企画をやろうとか、とにかくひとバンドひとバンド丁寧に話をするようにしています。もう、やるしかないので。2021年もそのように続けていきたいと思っています。
市川◆シネ・ウインドはどうですか。
井上◆たくさんの映画がある中で、なぜこの作品を上映するのかを、お客様にちゃんと届けたいと思っています。座席指定にも取り組む予定です。安心安全に映画を見られる環境を整えるのはもちろん、そのことをアピールしていかなければならないなと思いました。これまで、ライブハウスや演劇関係の方は、近いけどなかなか交流はなかった。今回をこういう機会を得てとてもよかったし、これをきっかけに何か新しい交流が生まれればいいなと思います。
市川◆いますぐ案があるわけではないのですが、NIIGATA CULTUREとして、何かつながっていけたら、その第一歩になれたら、うれしいですね。
逸見◆株式会社の設立やクラウドファンディングはあるのですが、8月のお化け屋敷以降あまりにも仕事が暇だったので、「脱出ゲーム」を企画しました。感染症対策をしっかりやって完全予約制で。年明け、1月か2月になると思いますが、そちらにも足をお運びください。
※詳細 → 演劇×脱出ゲーム「えんとつ村からの脱出」http://entotsumura.com/
市川◆それは楽しみですね。シネ・ウインドでも今後いろいろな催しがあります。正しく恐れつつ、皆さんで楽しく遊びましょう。今日はありがとうございました!
写真/武居亮
テープ起こし/高橋さや
テープ起こし・文・構成/市川明美
※当日の様子を紹介する記事は月刊ウインド1月号にも要約して掲載しています。
※シネ・ウインド35周年祭は2020年11月7日~12月11日に開催しました
〈メモ〉
■新潟古町えんとつシアター…本格的な設備を備えた小劇場。2015年4月にオープンし、現在6年目。
■新潟 LIVE HALL GOLDEN PIGS…RED、BLACK、YELLOWと、収容人数の異なる3つのSTAGEで様々なジャンルを楽しめるライブホール。2020年9月に丸10年を迎え、現在11年目。
■住所は共に、新潟市中央区東堀通6番町1051−1 G.Eビル
えんとつシアターは地下、GOLDEN PIGSは3、5、6階
※石塚翔さんの原稿が月刊ウインド11月号P.31にあります。
※逸見友哉さんは月刊ウインドにて「シアター日和」連載(18年10月号~19年8月号)。
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