2022/8/6~8/19
“2010年5月、惜しまれつつ亡くなった中学教師がいた。
蒲 益男(かば ますお) 享年58歳。
彼の葬儀には教え子だけでなく、世代や職業を問わず300人を超える
人々が参列し、皆、故人を偲び涙を流した。
彼はどこにでもいる普通の教師。
これほどまでに惜しまれるとは一体どのような人物だったのか?
”蒲先生の教師としての原点である大阪、西成区の中学校で取材を進めたところ、
彼と1980年代を共に過ごした同僚教師と、卒業生から話を聞くことができました。
そこで目の当たりにした「人との距離感」に驚くと同時に、
羨ましさに近いものを覚えました。 三十年以上も前のことを
まるで昨日の出来事のように話す教師と生徒のあいだには、
「教育者と学び手」、「大人と子ども」を超越した「人として対等」な人間関係が
築かれているのがはっきりと分かったのです。
二年半をかけた取材を経て、当時の中学校でどのような学校生活が
送られていたのか、何度もぶつかっては理解し合った姿を知るにつれ、
現代を生きる人たちへの道しるべになるものが作れると確信しました。
映画に関わる人間だからこそ、その発信力を生かすことができる。
私はどんな困難があろうとも映画にしなければいけないと決心したのです。