土木工事の現場監督を務めるニックには、妻メイベルと3人の子供がいる。ある日、妻と二人きりで過ごす約束をしていたのだが、突然の事故処理で家に戻れなくなってしまう。メイベルは子供たちを彼女の母親のところに預け、その日を楽しみにしていたのだが、ニックからの電話で約束が反故になったことにショックを受ける。メイベルは夜の街を彷徨い、バーで知り合ったガースンという男を家に連れ込んでしまう。翌朝、彼女は見知らぬ男に驚き、昨夜の失態を思い出す。ガースンを帰すが、メイベルの精神状態はいっそう不安定になる。そんな中、ニックが部下の労働者たちを連れて家に戻ってくる。彼女は皆にスパゲティを用意し、会話をはずまそうと明るく振る舞うが、次第に抑制が利かなくなっていく。そして、ついにニックは妻を怒鳴ってしまう。
メイブルの言動は目に見えておかしくなっていく。そして、ニックの母親がいる前で、メイベルの不安定な状態は頂点に達する。ニックはそんなメイブルを深く愛していたが、彼女を入院させようと友人のゼップ医師を呼ぶ。医師の姿を見たメイブルは手が付けられない状態になり、自分が理解されない悩みや苦しみを繰り返す。その後、メイブルを入院させたニックは
仕事にも身が入らず、部下に怪我をさせてしまう。
6か月が過ぎ、メイベルが退院する日がやってきた。ニックは知人・友人を呼び、退院を祝う盛大なパーティーを開こうとするが、母親に諭されて彼らを帰らせる。そうこうしていると、入れ替わりにメイブルが返ってきた。しかし、戻ってきたメイベルは落ち着いてはいたが、どこか覇気がない。ニックは彼女に自分を抑える必要はないと告げるが、メイベルは混乱する。そして、彼女は自殺を図ろうとする。心配した子供たちは彼女を庇う。やがて、興奮が収まるとメイベルは静かに子供を寝かせ、ニックと一緒に部屋の後片付けを始める。喧噪の後の静寂。夫婦は初めてお互いを見つめ直そうとしていた。
こわれゆく女〈ジョン・カサヴェデス レトロスペクティブ リプリーズ〉
2023/11/3~11/5
© 1974 Faces International Films,Inc.