うつろいの時をまとう

うつろいの時をまとう
2024/2/243/1
2/24㈯三宅流監督来館
うつろいの時をまとう

風景に心をよせる。
服が、生まれる。
見慣れた世界が変わっていく──
服飾デザイナーの創作の記録。


2020年1月。東京・青山のスパイラルホールで、服飾ブランドmatohuの8年間のコレクションをまとめた展覧会『日本の眼』が開催された。matohuは“日本の眼”というタイトルのもと、「かさね」「ふきよせ」「なごり」など日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマに2010年から2018年までの各シーズン、全17章のコレクションを発表してきた。デザイナーの堀畑裕之は大学でドイツ哲学を、関口真希子は法律を学んでいたが手仕事や服作りへの思いからファッションの世界に飛び込む。堀畑はコム デ ギャルソン、関口はヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積む。そして2005年にブランド「matohu」を立ち上げ、彼らは“長着”という独自のアイテムを考案した。着物の着心地や着方の自由さから着想を得ながら、今の生活に合わせた形で作り出されたモダンなデザインの服である。

2018年、matohuは『日本の眼』最後のテーマとなる「なごり」コレクションの制作に取りかかり、伝統的な技術を持つ機屋や工房と協業しつつ、テキスタイルを作り上げていく。堀畑と関口はアトリエで激しい議論を繰り返しながら妥協することなくデザインを完成させ、そしてファッションショーの日を迎える。

監督は、『躍る旅人─能楽師・津村禮次郎の肖像』など、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを描き続けてきた三宅流。大量消費、情報過多の時代に、本当に大切なことは何かを問い、気鋭の服飾デザイナーのクリエーションを通して、日常の身近な気づきに出会う旅へ──。驚きと発見に満ちたアートドキュメンタリーが誕生した。