8/21(土)~9/3(金) シネ・ウインド上映 ※火曜定休
各国の傑作ホラー映画3作品 日替上映
…8/21(土)、8/27(金)、8/29(日)、9/1(水) 連日 18:50~ 『地獄の警備員 デジタルリマスター版』
…8/22(日)、8/25(水)、8/30(月)、9/2(木) 連日 18:50~ 『屋敷女 ノーカット完全版』
…8/23(月)、8/26(木)、8/28(土)、9/3(金) 連日 18:50~ 『悪魔の墓場』
〈シネ・ウインド上映企画部/悪魔の毒々フリークスpresents〉
★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/
★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/
★8/21(土) 『地獄の警備員』、22(日)『屋敷女』、28(土)『悪魔の墓場』上映後に、上映企画部によるミニトークあり(約10分)
〇恐怖映画祭2021のススメ【後編】〇
ウインド恐怖映画祭2021
震えて眠ろう キヨシこの夜
【後編】
『屋敷女』ノーカット完全版
監督・脚本 アレクサンドル・パスティロ(『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』)
共同監督 ジュリアン・モーリー(『リヴィッド』)
製作 ヴェラーヌ・フレディアニ
フランク・リビエール(『リヴィッド』)
撮影 ローラン・バレ(『フロンティア』)
美術 マルク・ティボー(『恐怖ノ白魔人』)
特殊効果・メイクアップ ジャッキー=オリバー・モロン(『ZMフォース ゾンビ虐殺部隊』)
衣装 マルティーヌ・ラパン(『トランスポーター』)
編集 バクスター(『ピラニア3D』)
音楽 フランソワ・ウード(『ハイテンション』)
出演 ベアトリス・ダル(『ベティ・ブルー』)、アリソン・パラディ
本作は2007年のフランス製で、日本で初公開されたのが2008年の6月。13年を経てノーカット完全版として再上映されることになりました。当時はかなりショッキングなものがやってきたぞ、と業界関係者や好事家たちから注目され、観てみたらビックリ仰天。その暴力的なスリル、ショック、血みどろの無惨さから、配給や契約担当も震え上がった。
アリソン・パラディ演じる妊婦さんは、交通事故で夫を亡くしてしまった。どうやら事故の相手方も亡くなったらしい。この悲痛な体験が映画のファーストシーン。事故車に同乗していた彼女は胎児と共に一命をとりとめ、時間が経ちました。クリスマス・イヴ、もう翌日には産まれるかもしれないという状態での夜。ひとりの女性が自宅を訪ねてくる。姿にも声に覚えがない。電話を貸して、中に入れてと言ってくる。何だろう、誰だろう。怖いので帰ってもらおうとする。すると相手の女は、何故か彼女の名前も、夫が死んだことも知っている。どんどん怖くなってきたので、警察に通報し、周りを調べてもらった。女はいなくなっていた。警察にはまた様子を見に来てもらうことにして、引き上げてもらった。何だったんだろう。もう来ないだろうか。とりあえず今日はもう休もうと横になる。スヤスヤ。…。…。黒衣の女がすぐそこに立っていた。ハサミを持って切りつけてきた。ああ痛い。怖い怖い。何でなの。何でなの。誰なの。何が狙いなの。わからない。わからない。こうして地獄のような一夜が始まっていきますよ。
2003年にアレクサンドル・アジャが監督した『ハイテンション』がヒットを記録し、2006年にはある夫婦が恐ろしい出来事に遭遇する『THEM ゼム』が製作されました。その後に『屋敷女』や『フロンティア』『マーターズ』が作られ、この頃フランスではスリル、ショック、サスペンスで心臓がはり裂けんばかりの残酷映画が盛り上がったんですね。アメリカの殺人映画、イタリアの猟奇ミステリー、日本の幽霊譚に負けないくらい恐ろしすぎて凍り付くような流血映画を製作してやろうと、フランスの気鋭作家たちが張り切って乗り出しました。アレクサンドル・パスティロもそのひとりで、元々はホラー映画専門誌『マッド・ムーヴィーズ』のライターだったんですね。自分で執筆した脚本作品の監督に就任し、映像演出についてはPVや短編を発表していた過激派のジュリアン・モーリーと組んで本作を撮り下ろしました。刺激が強い映像作品に造詣が深いコンビによる、女性同士の対決をテーマにした、映画史上最高峰の残酷を含むヴァイオレンス・ショッカーが完成してしまいました。
ということで、謎めいた黒衣の女と妊婦さんの凄惨争い。切り裂く、刺し貫く、撃ち砕く、もはやステイ・ホームもままならない、自宅内で繰り広げられる血と暴力のつるべ打ちがいつまで続き、どこまで深まるか。床も壁も着ている衣服も血飛沫だらけで見るも無惨なこの闘いが、最後の最後にどんな決着つけるのか。この映画はヒッチコックより、アルジェントやフルチのジャーロ映画より、中身がお話しできません。もう観てもらうしかない。これだけ痛ましいホラー映画はなかなか作られません。『屋敷女』というフレンチショック。この残酷レヴェル。劇場では凄まじい慟哭が響きますよ。じっくり緊迫して、恐怖して、震え上がってください。
『悪魔の墓場』
監督 ホルヘ・グロウ(『悪魔の入浴/死霊の行水』)
製作 エドモンド・アマティ(『地獄の謝肉祭』)
脚本 サンドロ・コンチネンツァ(『地獄のバスターズ』)、マルチェロ・コスチア(『血塗られた墓標』)
撮影 フランシスコ・センペレ(『熱愛』)
編集 ヴィンセンツォ・トマッシ(『サンゲリア』)
特殊効果・メイクアップ ジャネット・デ・ロッシ(『ビヨンド』)
音楽 ジュリアーノ・ソルジーニ(『エクソシスト3』)
出演 レイ・ラヴロック(『カサンドラ・クロス』)、クリスティーヌ・ガルボ(『象牙色のアイドル』)、アーサー・ケネディ(『アラビアのロレンス』)、アルド・マサッソ(『スリープレス』)、ジョルジオ・トレスティーニ(『荒野の処刑』)
皆様、お待ちかねのゾンビ映画です。それもただの怪物映画、悪趣味映画じゃあない。死体がむっくり起き上がって、何故だか襲いかかってくる。この奇妙と絶体絶命。それを薄気味悪く、イヤらしい感じで、じっとり捉えて見せた怖い怖いゾンビ映画です。
主人公は骨董品商売をしている男で、店を連休にし、バイクに乗ってロンドン郊外へ向かいます。途中立ち寄ったガソリンスタンドで少々トラブルに遭い、そこで知り合った若い女性と仕方なさそうにお出かけします。丘陵地帯の小村に着いた二人が道に迷っていると、女の人がずぶ濡れの変質者に襲われそうになって怖い思いをする。ところがそんな変な人の姿は見えない。おかしいなぁ。何だろうなぁと思っていると、その夜に惨たらしい殺人事件が起こる。主人公の男はとんだ足止めをくらったうえに警察にまで目をつけられるのでどんどん気の毒に。それどころか、産まれたばかりの赤ん坊が凶暴になったり、襲ってきたという変質者は1週間前に溺死した男だったり、ロクなことがないなぁと不貞腐れていると、いよいよ怪奇が最高潮に。墓場の地下にある遺体安置室で、死体が次々と起き上がり始めた。そうしてウエェェとかオォォォとか呻きながらちょっかい出してくる。ひっ捕まれば体を裂かれてはらわたを掴みだされて喰い散らされる。これは地獄絵。こんな無惨から生きて帰れますの?
アメリカで製作された『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』があまりにも恐ろしい作品だったもので、イタリアの腕利きプロデューサーのエドモンド・アマティがスペインのホルヘ・グロウ監督を口説き落とし、後に続いてカラーリメイクだと企画製作を始めました。幸運にも監督、脚本、撮影、美術に優れた才人たちが集い、出発点こそ亜流作品の流れだったものの、商魂と個性が発揮された映画の製作摩擦によって恐怖いっぱいめに迫る傑作が完成しました。
映画の前半は湿りきった不吉感が漂い、巻き込まれた男女の不運が深化していくところが哀れでサスペンスなんですが、ついに死者たちが蘇ってからは衝撃の惨憺がゾワゾワと交感神経を興奮させます。奇妙なのはゾンビたちの眼が真っ赤で、呼吸音なのか、唸り声なのか気味の悪い音を発してのそのそやってくるところ。アメリカンとは少し違うような、不思議な怪奇まで含んでいます。おまけに具合が悪そうなのに、生前以上に怪力持ちで、墓石をぶん投げたり腹部を紙切れのごとくバリバリ破いたり、なかなかアグレッシヴなところがありますよ。
この映画に恐怖と個性をもたらした重要なキーマンが特殊メイクを手掛けたジャネット・デ・ロッシですね。1942年生まれのイタリアの大御所アーティストで、26歳のときにセルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』でメイクアップを担当。『悪魔の墓場』の造型を手掛けたのは31、32歳のときでした。その後、フェデリコ・フェリーニの『カサノバ』、ベルナルド・ベルトリッチの『1900年』のメイクに携わり、ルチオ・フルチ監督の黄金期を支えました。『サンゲリア』『ビヨンド』『墓地裏の家』で再びシュールさとショックを前面に押し出したゾンビの特殊メイクと残酷効果を造り出し、映画ファンの度肝を抜きました。その後はアメリカに渡って『キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2』『ランボーⅢ』、『デイライト』『仮面の男』、シネ・ウインドでも上映した『セブン・シスターズ』にも参加。2021年4月11日に79歳で亡くなりました。今回の上映は造型職人として辣腕を振るい続けたアーティストの逝去を悼み、追悼上映というかたちで無茶を通しました。皆さんもこの上映で、ゾンビの闊歩とカニバリズムを存分に怖がって、冥福を祈ってもらえたらと思います。
『悪魔の墓場』はスペインとイタリアが創意と技術を合わせ、アメリカの二番煎じに終わらない作品を作り上げました。ストーリーには根拠を加味し、怪奇と残酷のカラーを付着し、グロテスクな音響効果を生み出して、常識を超えたゾンビ映画となって世界中の好事家に恐怖苦悶をもたらしました。完成から時間を経ていますが、この映画に宿った異様な気配はいまだに息衝いています。いまの映画界ではほとんど失われてしまった異質趣味といいますか、奇妙奇天烈なホラーロマンがこの映画には活きております。この血生臭い奇々怪々の体感を劇場にて得てもらいたいですね。ジャネット・デ・ロッシの追悼上映企画というのも、おそらく日本でシネ・ウインドだけだと思います。名作『悪魔の墓場』が新潟で上映されるのも、またとないかもしれません。「最も恐ろしいゾンビ映画」とも支持されるこの作品が、再び多くの方の記憶に焼き付いたらと思います。ぜひじっくりご覧になって、ゾーッと凍りついてください。
(上映企画部 若槻)
★ウインド恐怖映画祭2021上映作品には残虐な場面や、グロテスクな表現が含まれます。ご注意ご覚悟のうえ、ご鑑賞ください。
『屋敷女 ノーカット完全版』
上映スケジュール…8/22(日)、8/25(水)、8/30(月)、9/2(木) 連日 18:50~
2007年 フランス (1時間23分) 〈R18+〉
配給:TOCANA
監督:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ
出演:ベアトリス・ダル、アリソン・パラディ
©2007 LA FABRIQUE DE FILMS BRFILMS
公式サイト https://yashiki-onna.jp
『悪魔の墓場』
上映スケジュール…8/23(月)、8/26(木)、8/28(土)、9/3(金) 連日 18:50~
1974年 イタリア・スペイン (1時間35分)
配給:ブラウニー 監督:ホルヘ・グロウ 出演:レイ・ラヴロック、アーサー・ケネディ