【午後6時の秀作選】第1弾 4/6㈯~4/19㈮ ※火曜休館
1998年 イギリス 1時間10分 モノクロ 配給:AMGエンタテインメント
監督・製作・脚本・撮影・編集:クリストファー・ノーラン
製作総指揮:ピーター・ブロデリック
製作:エマ・トーマス / ジェレミー・セオボルド
共同編集:ギャレス・ヒール
美術:トリスタン・マーティン
特殊メイク:ミランダ・ガニング
VFX:ダン・ウィンスロップ
音楽:デビッド・ジュリアン
出演:ジェレミー・セオボルド / アレックス・ハウ / ルーシー・ラッセル / ジョン・ノーラン
いま最も新作が待ち望まれている人気監督のひとり、クリストファー・ノーランの新作映画『オッペンハイマー』の日本全国公開開始に合わせた、長編デビュー作の高画質上映となります。『Following』とは追跡、尾行ですね。これは若い小説家を主人公に、創作ネタのためと群衆からひとりを無作為に選んで尾行していくうちに、孤独なモノクロ人生が犯罪の色に染まっていき、事件に没入する様子を描いた作品です。
クリストファー・ノーランは幼い頃から映画に夢中で、『スター・ウォーズ』や『2001年宇宙の旅』などに影響され、早くから映画撮影を始めていました。イギリス・ロンドンの名門大学で英文学を修め、短編映画の製作を経て初長編『フォロウィング』に着手しました。この人は非常に頭のいい方で知られています。「2度、3度繰り返し観ることで新たな発見がある映画が好きだ」と言うあたり、自身の映画体験や学歴、優れた才能との出会い、知的かつ娯楽的な製作志向で次々と大成功を収め、いまや世界的な大監督のひとりとなりました。
そんなノーラン監督の長編デビュー作は予算も、技術も、人員も何も足らないような状況からスタートしました。この映画脚本は監督自身が、”人々の雑踏に飲まれやすい”ロンドンのウェスト・エンド地区での生活、また実際に空き巣の被害に遭った体験から生まれたといいます。大勢に囲まれながら孤独を生きる男の意識、売れない作家の尾行癖、泥棒という犯罪行為について脚本に取り入れ、そのアイディアを練りに練りながら、大胆な構成を試みます。時系列を無視し、作中の時間と出来事を意図的に入れ替え、ストーリーの分解・再構築を経て”見出し”を提示しながら物語を進行していくスタイルをとりました。
フィルム・ノワールと心理サスペンスの融合。その特色を記録映像を思わせるキャメラタッチで物語りました。1999年当時から映画祭で評判となり、審査員や評論家から新たな驚異的才能と注目され、そこから『メメント』『プレステージ』『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』と大出世を果たしました。この監督がストーリーテリングと撮影をいかにこだわり、映画の命としてきたか。ただ当たる映画じゃあない、面白い映画とは何がどう面白いか、研究・創作・洗練を重ねてきた、現代映画の偉人ですね。上映企画【午後6時の秀作選】の第1弾に相応しいタイトルだと思います。若きノーラン・スタイルをじっくりお楽しみください。(宇尾地米人)