未来に希望を、これは命懸けの「話し合い」
2005年から2009年にかけて南米ボリビアで実際にあった事件を基に執筆され、18年にベストセラーとなったミリアム・トウズの小説を、女優・監督として目覚ましく活躍するサラ・ポーリーが映画化。ブラッド・ピット率いる製作会社による総指揮、フランシス・マクドーマンドによるプロデュース・出演に、アカデミー脚色賞の受賞と、早くから「今年の代表傑作」と大好評を博してきた要注目作品の登場です。
架空の村を舞台に性被害に遭った女性たちが、男たちが街へ出て不在となる2日間、「赦すか、闘うか、去り行くか」自らの未来のために緊迫した話し合いを重ねていく姿を描く。これまでも度々触れてきたように、女性映画監督の躍進やフェミニズムの潮流がよく目立っていて、本作の完成発表は昨今の製作ブームの、ひとつの集大成であることを感じさせます。
『12人の怒れる男』が発表されて70年近く経ちますが、本作も人間社会の有り様を鋭く描出する、話し合う傑作映画として記憶されていくことでしょう。全神経を研ぎ澄ませてじっくりご鑑賞ください。(月刊ウインド2023年8月号より)