『東京カウボーイ』

2024年6月16日
若槻

6/22㈯~7/5㈮ ※火曜休館

2023年 日本 1時間58分 配給:マジックアワー

監督・原案:マーク・マリオット

脚本:藤谷文子 デイヴ・ボイル

製作総指揮:ジョン・フォス ジェイン・サリヴァン

製作:ブリガム・テイラー ジェリ・ラフター

撮影:オスカー・イグナシオ・ヒメネス

美術:ケイト・リンゼイ

衣装:ミスティ・ローズ

音楽:チャド・キャノン

編集:井上ヤス

出演:井浦新 ゴヤ・ロブレス 藤谷文子 ロビン・ワイガート 國村隼

 「会話が面白い映画」を観るとついつい嬉しくなってしまうのは私だけでしょうか?物凄いスペクタクルなシーンがあるわけでもなく次々と殺人事件が起きるわけでもない。でも面白い。画面に引き込まれて映画の登場人物達の会話に耳を傾け、笑い、共感する。スクリーンの向こうの世界で彼らが生きている説得力がある。それだけでも映画体験としては最高ではないでしょうか?

 『東京カウボーイ』は東京のサラリーマンヒデキがモンタナ州に訪れ、牧場の収益改善に挑み言葉が通じない中、現地の人々との交流を通じて効率主義のヒデキが本当に大切な物を見つけるヒューマンドラマです。こう聞くと真面目で地味なストーリーと思われるかもしれません。しかし、この映画では随所にコミュニケーションのすれ違いによるミニコントの様なシーンが連発されます。主人公が「私の名前はヒデキです」と名乗れば「headache(頭痛)?」と返されます。

 これは一歩間違えれば英語が不慣れなキャラクターを揶揄しているギャグになりかねません。しかし、この映画が上手いのは日本語話者同士でのすれ違いもキチンと描いている所です。「言語は関係ない、大切なのは人と正面から向き合う事だ」というテーマを一貫して描いてるのです。「言語の壁」とついつい表現してしまいそうになる僕に「言語のせいにすな!大事なのは気持ちだ!」と映画から説かれてるようでした。

 一見、地味なストーリーでも観客を退屈させないようにギャグを盛り込みながら、それ自体がテーマに繋がってくる巧みな脚本。誠実さとユーモアのバランスがとれていて心置きなく笑う事が出来る。そこに映画を作るために集まった才能のある脚本家や俳優の力量を垣間見る事が出来ると思うのです。(渋谷)