8/14(土)~8/27(金) シネ・ウインド上映 ※火曜定休
★上映時間→ https://www.cinewind.com/schedule/
★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/
フランスの名女優たちが奏でるカラフル&キュートな人生賛歌!!
良き妻の条件。それは、わきまえる 自由であること!
〇『5月の花嫁学校』のススメ〇
シネ・ウインド フランス映画連続上映
新潟フレンチ・コネクション2021
『5月の花嫁学校』
「つい最近まで、理想の女性は良妻賢母とされ、フランスには専門の家政学校が多くあった。これは1968年5月危機前夜のヴァン・デル・ベック家政学校の物語である。ぶどう畑で有名なアルザス地方の村にも、革命の足音が近づく」―本編オープニングより
このように、かつてのフランスで設立運営されていた家政学校では、将来、立派な主婦となる女性たちを輩出すべく、品性と行儀の養成がなされるわけですね。なんのためか? 未来の旦那様のため。子どもが立派に育つため。家庭内が身体的にも精神的にも健全であるようにするため。それでどうなるか? 家庭の健全化によって社会が安定する。社会の安定化によってよき世界が実現する。つまり、主婦の勤めは非常に重要だということ。
家政学校では未来の良妻賢母を目標に主婦の心構えや作法が指導されます。旦那様のため家庭のために私欲を捨てて勤しむべしと、主婦の鉄則7か条とやらを伝授されます。良き妻であれ、雑念を払って家庭に集中せよ。男は会社で、女は家庭で、社会の歯車として機能せよということですね。それが当然という、古くからの取り決め。夫に尽くす女の気概とは。いまを生きる若い娘たちは考えます。やがてある学生がとった行動は…。
ということで、本作の背景が1968年、フランス5月危機(または5月革命)の時期であることがわかっていると、面白みがより増すと思われます。5月危機。学生運動から抗議活動、大規模デモの激化によって当時のド・ゴール体制政権を揺るがしたフランスの社会危機、または社会変革闘争。当時は世界的に反戦運動や学生運動、抗議やデモが勃発した激動の年。フランスにおける5月危機は大変な出来事で、後の大衆思想や社会運動に影響を及ぼすストライキの成功実績です。ここで学生たちが掲げたスローガンが「Egalité! Liberté! Sexualité! (自由、平等、性の解放!)」。若者たちが政府の旧態依然や不平等な考え方を猛批判し、新しい政治を求めたこと。その活動が過激化し、パリから地方へ、やがてフランス全土に影響が渡り、ド・ゴール大統領の政治生命が危うくなるまでに及んだこと。このような当時のフランスの背景を頭に入れておくと、本作の演出がよりハッキリしてきます。
『5月の花嫁学校』は2020年のフランス映画。本作に携わっているのは、フランス芸術娯楽を粉骨砕身で磨き上げる一流スタッフたち。監督はマルタン・プロヴォ。『セラフィーヌの庭』『ヴィオレット ある作家の肖像』『ルージュの手紙』と女性主役の秀作ドラマを手掛けてきた俊英作家。女性像の変革と躍進をテーマにした『5月の花嫁学校』は、この監督の並々ならぬ念入りを感じます。これまでフランス映画にはあまり馴染みがなかったという方は、国内外で高い評価を受け続けるプロヴォ監督の過去作をご覧になってみてはいかがでしょう。
本作のエネルギー源である女性たちの感傷や溌剌とした姿をキャッチした撮影監督はギヨーム・シフマン。『あの日の声を探して』『グッバイ・ゴダール!』『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』など多彩な話題作を手掛け、名演技や名演出を捉え続けるキャメラマン。美術監督は『薬指の標本』、プロヴォ監督の前3作でも組んでいるティエリー・フランソワ。衣装デザインはプロヴォ監督作のほか、『アメリ』『ロング・エンゲージメント』『ミックマック』『天才スピヴェット』とジャン=ピエール・ジュネ監督作の常連でもあるマデリーン・フォンテーヌ。軽快なリズムと効果をもたらした音楽の作曲はグレゴワール・エッツェル。ドゥニ・ヴィルヌーヴの『灼熱の魂』、アンヌ・フォンテーヌの『夜明けの祈り』、黒沢清監督の初海外作品である『ダゲレオタイプの女』などを手掛けています。ラストまで愉快に駆け巡るエッツェル・サウンドもこの映画のポイントのひとつです。キャストにはご存知、世界三大映画祭すべての女優賞を受賞しているフランスを代表する女優のジュリエット・ビノシュ。『セラフィーヌの庭』『神様メール』のヨランド・モロー。『カミーユ、恋はふたたび』で監督・脚本・主演を務めたノエミ・ルヴォウスキー。『パリは今夜も開演中』『今さら言えない小さな秘密』のエドゥアール・ベール。
この夏シネ・ウインドではフランス映画が連続して上映されています。『5月の花嫁学校』は面白いコメディですが、ただ爆笑が巻き起こるタイプの演出ではありません。地方の家政学校に5月革命の気配が迫るスリル、古くからの価値観に新風が吹き込まれる、クライマックスのフレンチタッチ。『七人の侍』や『エクスペンダブルズ』といった男映画があれば、本作のような女性賛歌もある。フランスこそ映画の国。フランスから面白い映画がどんどん届いているのは嬉しいことですね。シネ・ウインドでは8/14(土)から2週間上映です。ぜひご覧ください。
(上映企画部 若槻)
2020年 フランス (1時間49分) フランス語 〈PG12〉 原題:La bonne epouse
配給:アルバトロス・フィルム 監督・脚本:マルタン・プロヴォ
出演:ジュリエット・ビノシュ ヨランド・モロー ノエミ・ルヴォウスキー エドゥアール・ベール
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