『生きる LIVING』

2023年8月3日
シネ・ウインド

名作映画が蘇り、これからも生きていく

 病に冒されている主人公が今までの仕事と生き方について見詰め直し、精一杯の決断と行動を示した黒澤明監督作品『生きる』(1952年)がイギリスにて再映画化。その製作は英国の大物プロデューサー、スティーヴン・ウーリーとエリザベス・カールセンによる主導である。

 長崎から渡英し、『日の名残り』『わたしを離さないで』などを著したノーベル文学賞作家カズオ・イシグロが脚本を手掛ける。『マイ・ブックショップ』『MINAMATA -ミナマタ-』といったシネ・ウインドのスクリーンでもお馴染みとなりつつある大御所俳優ビル・ナイが主演し、不朽のヒューマンドラマが鮮やかに蘇る。

 イシグロさんが原作から影響され続けてきたという人生観、「手柄や称賛ではない、成すべきことだからやる」という志村喬さんが力演してみせた類稀なる人間性は同じく話題作の『幻滅』(2021年フランス)と対極になる作劇を感じさせます。この機会に是非、両作品の人間劇を感性に吸い込んでみてください。(月刊ウインド2023年8月号より)