『PIG/ピッグ』

2023年1月2日
シネ・ウインド

1/14(土)~1/20(金) シネ・ウインド上映 ※1/17休館
★上映時間→ 19:00~20:40  https://www.cinewind.com/schedule/
★劇場受付と公式サイトで13日前より座席チケット販売中 購入はこちら→ https://cinewind.sboticket.net/
★1/14(土)上映後、上映企画部・若槻部長による映画小話あり

 今回の上映は、とうとうお待ちかねです。あの名優ニコラス・ケイジ主演作品。それも映画出演100作品目だというこの『PIG/ピッグ』。恐る恐る観てみましたら、ビックリしました。森の中のドワーフみたいなニコラスが、あまりにもニコラスで。大切なブタさんを奪われて、それを追い捜しに行く姿。それから何とも知れない男の姿を晒していく演技は、紛れもないニコです。ニコニコです。「俺は演技を続けないと生きていけない」という俳優熱、芸能の熱が、あつあつとホットしてきて、すっかり参りました。さて、この『PIG/ピッグ』という本作。一見、ブタを奪い去った悪人たちを追い、どうやってしばき倒すのかを期待させるリベンジものを思わせますが、実はそういった『狼よさらば』や『96時間』のような男臭い人気ジャンルのお決まりをなぞったものとも言い難い、独特の風格を備えた作品になっています。だとしたらどういったものなのか。例によって、ここで詳しいことは申せません。主演と製作を兼ねているニコラス・ケイジが、このマイケル・サルノスキという新人監督に演出を委ね、演技へ全集中したこの姿を、まずはじっくり見届けてもらいたい。

PIG

 アメリカ、オレゴン州の山奥。ニコラス演じる主人公は、トリュフ・ハンターとして生活している。孤独ではあるが、トリュフの採集に欠かせない相棒であるブタを家族のように溺愛していた。ところがある日、何者かから暴行を受け、ブタを連れ去られてしまう。大切な相棒を捜し取り戻すため、数年ぶりに街へと降り、ビジネスパートナーの若者と共に手がかりを求めていく。そこで、ある男と話し合うなか、ニコラス扮する主人公はかつて、かなりの有名人であり、いまは無価値な男と成り果てていることが分かる。ブタの行方の手がかり、謎の犯人像、かつての知り合いと再会していくなか、男の過去と執念が紐解かれていく。果たして無事にブタを取り戻し、おウチに帰ることが出来るのか。

 ということで、これはアクションものでも、スリラーでもありません。山奥へ潜り、心を閉ざしていた男が、奪い去られた相棒を捜しに行く執念。そして男が向き合う過去とは何なのか。これを俳優ニコラス・ケイジが全身全霊で体現してみせる独特なドラマです。段々と、映画は意外な展開を見せていきます。そのあたりは申せませんが、原案から脚本まで手掛けているサルノスキ監督と、ニコラス・ケイジが、何が何でもこの未曽有のドラマを映画にしてみせるという製作執念が結実した本作。執念深くミステリアスで底知れない情が漂うこの男の足取りと他者への眼力を、ただじっくり見届けるしかない。

PIG

 ニコラス・ケイジは1964年1月7日生まれ、最も多才な俳優のひとりとして知られ、ドラマとコメディの両方で心打つ演技を披露してきた俳優。本名はニコラス・キム・コッポラ。父はサンフランシスコ州立大学の学部長、母は元バレエ・ダンサー、そしてフランシス・フォード・コッポラを叔父に持つ名門の出身。12歳のときに家族がサンフランシスコに移るまで、カリフォルニア州ロングビーチで育った。15歳でサンフランシスコのアメリカン・コンサーバトリー・シアターに入学し、演技を始めた。その後ロサンゼルスに引っ越し、当時高校生の時にテレビ映画『The Best of Times』に配役された。映画デビュー作は1982年の青春コメディ『初体験/リッジモンド・ハイ』。続いて叔父のコッポラ監督の『ランブルフィッシュ』に出演。

ニコラス・ケイジ

シリアスな演技が似合う俳優として初めて確立したのは、苦悩のヴェトナム退役軍人を演じた1984年の『バーディ』だった。アラン・パーカーが監督したこの作品は、カンヌ映画祭で審査員賞を受賞。またシェールの恋人役を演じた『月の輝く夜に』でゴールデングローブ賞最優秀男優賞候補となった。ローラ・ダーンと共に主演したデヴィッド・リンチ監督の『ワイルド・アット・ハート』はカンヌ映画祭パルムドール賞に輝いた。彼に初めてアカデミー賞をもたらした1995年『リービング・ラスベガス』においてアルコール中毒男に扮した彼の演技は記憶に残る名演として代表作となっている。『ザ・ロック』、『フェイス/オフ』、『コン・エアー』といった娯楽アクション大作にも出演し続け、『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』や『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』などプロデュース業も積極的に携わっている。2010年以降、主演した大作映画の興行不振や浪費癖による財政難から、仕事を選ばないかたちで低予算作品への出演を連続し、2022年に借金完済が報じられた。先述の通り、『PIG/ピッグ』は映画出演100作品となり、今後も新たな主演作品の日本公開が控え、ハリウッドスターの地位は危ぶまれながらもまだまだ活躍が止まらない大人気俳優だ。

宇尾地米人

『PIG/ピッグ』

2021年 アメリカ

監督 マイケル・サルノスキ
製作 バネッサ・ブロック、ディミトラ・ツィングー、トーマス・ベンスキー、ベン・ギラディ、ドリ・A・ラス、ジョセフ・レスタイノ、デビッド・キャリコ、アダム・ポールセン、ニコラス・ケイジ、スティーブ・ティッシュ
脚本 マイケル・サルノスキ
撮影 パット・スコーラ
美術 タイラー・ロビンソン
衣装 ジェイミー・ハンセン
編集 ブレット・W・バックマン
音楽 アレクシス・グラプサス&フィリップ・クライン

出演 ニコラス・ケイジ
   アレックス・ウルフ
   アダム・アーキン
   カサンドラ・バイオレット