毎週土曜日はシネ・ウインド会員による運営機関「上映企画部」打ち合わせの日です。

過去を振り返り、いま映す作家たちの野心
フランスの映画監督アルノー・デプレシャンが自身の映画人生を振り返りつつ、映画と映画館へ想いをはせた渾身のシネマ・エッセイ『映画を愛する君へ』の上映が始まり、映画館の映画をフィーチャーする上映企画【狂い咲きシネマパラダイスR】の幕開けともなったいま、思うところがある。これまでも度々触れてきた事柄ではあるが、映画のこれまでと、これからについてである。1890年代に活動写真が発明され、映画興行が始まり、1927年にトーキー&ミュージカル映画が公開され、1935年頃から長編カラー映画が出来ていった。以降、映画の美技術や撮影スタイルは革新・進展が繰り返され、いまも新たな映画が製作され続けている。
ということで、かつて映画(活動写真)には音声がなく、ロイド、キートン、チャップリンら喜劇王たちも体を張ったギャグとアクションのパフォーマンスで世界中を愉しませていた。いまでは俳優の肉声や重厚な音響も当たり前となり、サイレント映画の趣や存在感も昔のものとして忘れられつつあるが、最近少し気になる展開が見られた。声や台詞を意図しない映画の再登場である。
1980年代ニューヨークで犬とロボットが織りなす友情を、セリフやナレーションを用いず描いたアニメーション映画『ロボット・ドリームズ』が昨年11月に全国公開されてから、口コミで話題となり、当初の20館から65館以上へ公開規模が拡大しロングランヒットを記録した。当館でも1月に上映した洋画『ゴンドラ』は「セリフがないからこそ生まれる映画的瞬間」に一貫してこだわり続けるファイト・ヘルマー監督の新作であり、寒い時期にもかかわらず好成績を記録した。そしてご存知”アクション映画界の名匠”ことジョン・ウー監督の新作は声帯を損傷したことで声を発することが出来ない男の復讐劇『サイレントナイト』(新潟市ではTジョイ万代さんで上映決定)、それゆえ全編セリフなしとのことである。
このようにヒトの肉声が意図的に届かない話題作が連続することとなる。声とはヒトの個性であり、いまあえてそれを除いた映画というのは、なかなか挑戦的である。同時に製作、撮影、監督、演者も、それを観る人たちも、佇まいや風貌、仕草、行動、そして映像の構図に集中することとなる。まさに映画である。映画とは基本的に自由なもので、様々なスタイルや色彩があって当然と思うが、このような現代のサイレント映画の登場は、たくさんの人々が映画を再発見、再認識する良い機会なのかもしれない。これからどのような映画が構想され、流行っていくことになるのか。興味深いところである。
若槻健人


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