上映企画部だより 2025/3/2

若槻

毎週土曜日はシネ・ウインド会員による運営機関「上映企画部」打ち合わせの日です。

「MDとブランキーと映画と

 先月MDが生産終了するというニュースを聞き、すこし心がザワついた。一応MDを知らない世代に向けて説明しておくと、音源の録音と再生が可能な小型のCD、のようなものである。え、わかんないって?AIにでも聞いてよ。
 

 わたしの中高時代に音楽を聴く手段といえばもっぱらMD。TSUTAYAで最新のヒットソングやらイカしたジャケットのCDを見つけてはレンタルし、自分だけのオリジナルMDアルバム制作に勤しんだものだ。あるときCDを物色していると、ボブ・ディランが彼女と一緒に写っているジャケットが目にとまり「ええなあ」と思わず見入ってしまったことがある。当時はみんなそうやって音楽と出会っていた。いまの若い人たちには想像もつかないような文化である。


 あのころわたしがMDでよく聴いていた音楽は90年代に活躍していた3人組ロックバンド、ブランキージェットシティーだ。いまだによく聴くし、最近では音楽配信サービスでも解禁となり尚のことよく聴いている。

 高校時代に聴いた彼らの曲で「ディズニーランドへ」という曲がある。曲名からして楽しいイメージを連想していたがとてもとても暗い曲であり、衝撃を受けた。それまで人気のJ-POPばかりを聴いていたせいか、初めてこの曲を聴いたとき「こんなことを歌にしてもいいのか!」と激しく慄きしばらく動けなくなった。これほどの衝撃は小4のころ、父親が運転する車のカーステレオから流れた井上陽水の「傘がない」を聴いたとき以来のことだ。


 そんな彼らの曲のなかには映画のことを歌った曲も多い。なんせ「小さな恋のメロディ」という曲があるくらいだ。わたしがこの曲を聴いてすぐさまレンタルビデオコーナーに駆け込んだことは言うまでもない。他にも「デニスホッパー」という曲だってあるし、イージーライダーに憧れている男の歌だってある。ボーカルの浅井健一が紡ぐ歌詞は、映像のように情景を浮かびあがらせ、どこか遠くの知らない国へとトリップしたような錯覚にさせられる。そう、彼らの音楽はまるで映画なのである。


 そんなふうにしてわたしは音楽から影響を受けて映画に興味をもつようになっていたのだと、MD生産終了のニュースを受けて改めて気づかされた。わたしの青春を彩ってくれたMDは消えてしまう。それでも音楽が広げてくれる世界は変わらず、きっとさらに広がっていくだろう。これからも音楽と映画の世界を行き来しながら、新しい景色に出会えることを楽しみにしている。

ホンマダイスケ

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