上映企画部だより 2025/4/6

若槻

シネ・ウインド上映企画会議 毎週土曜19時~

絶賛上映中!ロボット・ドリームズ!!

 私が小学生時代を過ごした90年代は、まわりに怖いものがあふれかえっており、いつも恐怖に震えながら生活することを余儀なくされていた。テレビをつければ『本当にあった怖い話』『木曜の怪談』『花子さんがきた!!』、映画は『学校の怪談シリーズ』『リング』『呪怨』、アニメは『地獄先生ぬ~べ~』、ゲームは『バイオハザード』『かまいたちの夜』と、あげればキリがない。そして怖い怖いと思いつつも当時のホラーブームにはしっかり乗っかっていたから、怖いものの求心力には感心する。

 小学6年生の時に父親と観にいった『新生トイレの花子さん』という映画がある。まず今見てもポスターが怖いしこの「新生」の2文字に妙に惹かれていた。なんてったってニュータイプの花子さんに出逢えるわけだ。どんな新技を披露してくれるのか楽しみで仕方がなかった。もう内容はすっかり忘れてしまったけれど、物凄く怖かったことは覚えている。私がこの作品で特に印象に残っているのがエンディングの曲である。不穏なイントロから始まるが、霧が晴れたように明るく希望に満ちたメロディーへと転調していく。すべてが解決し、あの曲を聴いたあとのカタルシスはたまらないものがあった。

 普段の生活に戻ってもよくあの曲を脳内で再生していた。何というかふとした拍子に曲が降ってくるような。歌手名も曲名も知らないし今みたいに気軽にネットで検索もできないから、しばらくはあの曲よかったなあ、と時折思い出すくらいだった。

 高校1年生になると歌手のaikoが人気だったのでよく聴いており、よし、ファーストアルバムから聴いてみようと思いたち、ラストの「あした」という曲を聴いてみた。するとあのエンディング曲が流れてくるではないか。

 その時の心境は、もう脳汁がじゅわじゅわ溢れ出し、やっと出逢えたことに感動して泣きそうになっていた。今この曲を聴いても、あの日、映画館を出て見上げた万代の快晴の空をありありと思い出せる。

 こういう過去と今とがつながる瞬間は往々にしてある。私にとっては絶賛上映中の『ロボット・ドリームズ』もそうだ。

 この映画の監督であるパブロ・ベルヘルは、日本のロックバンドSOPHIAが1998年にリリースした『黒いブーツ~oh my friend~』のMVを手がけた人物でもある。当時の私はこのノスタルジックでおもちゃ箱の中にいるようなMVが大好きだったので、『ロボット・ドリームズ』の監督がこのMVの監督をしていたと知ったとき、同窓会で数十年ぶりに友達と再会したような気持ちになりうれしくなった。両作品に共通するテーマは「友達との出逢い、友情、別れ」。20年近くの間は空いているけれど、監督の一貫した哲学のようなものを垣間見ることができた気がし、純粋にカッコいい人だなと感じた。

 と、ここまで『ロボット・ドリームズ』の宣伝のつもりで書き始めたこの文章も、薄々気付いてはいたけれど、話の枕の方が長くなってしまったことは否めない。けれどもあくまで本編は映画なのでぜひとも劇場でご覧いただきたい。当館上映初日は有難いことに大盛況!上映期間は4月18日(金)まで。席が無くなる前に未鑑賞の方も再鑑予定の方も劇場へお急ぎください!!

ホンマダイスケ

シネ・ウインド上映企画部では、上映作品の選定や、作品紹介をお手伝いしてくれる方を募集しています。上映企画会議は毎週土曜19時より、事務所2Fフリースペースにて。映画館の運営に興味がある方、見学・入部など、お気軽に劇場スタッフにお声掛けください。