編集部 ‐ 4月号は校正期間に入りました

TAKEI Ryo

「CoDMON(コドモン)」というアプリを介して、登園前の娘の体調や機嫌なんかを毎朝、こども園に連絡している。入力のし忘れをほんの数回しでかしたため僕は妻の信頼を失い、以後入力は彼女がせっせとしてくれている。

先日娘が、人に向けて使ってはいけない言葉を義父に発した。それなりと言えばそれなりの経緯が娘にはあって口から出たのではあるが、要するに「じじなんか死んじゃえ」というようなことを口走ったそうだ。

一昔というか、もう大昔になるのかもしれないが、「死ね」なんてセリフはバラエティ番組のツッコミで使われていたくらい、ありふれた言葉ではなかっただろうか。幼少期の僕にとっては頻出語だった(やなガキだった)。それが、今は本当に全然耳にしなくなった。冗談として受け容れられない言葉になったとは思える。

他方、覚えたての表現を深く考えずに使ってみたくなることだってあるだろうと擁護したくもなる。しかし僕の帰りが遅いがために、妻の実家で子どもの面倒を見てもらっている時に起きたことなので、僕がすべきことは大して残っていなかった。せいぜいたまたま買ってきた娘の好きなフェットチーネグミのグレープ味をにこにこして見せてやることくらいだった(いやもうちょっとなんかあるだろうが取り急ぎ)。

娘は結構叱られたようであった。いや、叱ってもらえたようであった。その夜、娘はしゅんとしていた。

「動画サイトやテレビで覚えた言葉ではないだろうし、きっと園のおともだち(同年代のよその子は例外なく“おともだち”と呼称される)が言っていたのかもしれないから、CoDMONで連絡する運びになっている」と妻が僕に報告をしてくれる。「面倒くさい親だと園から思われたくないなあ」と保身の気持ちがわく。

翌朝、歯ブラシに乗っけてやった歯磨き粉をちゅーちゅー吸っている娘を横目に、妻がしたためたCoDMONの文面をスマホで表示した。普段の20文字程度の連絡に比べれば、立派な長文であった。段落分けまでしてある。

5分ほどして、その長文を校正しようとしていた自分にはたと気がつき、娘の仕上げ磨きに取り掛かる。修飾語が直後の言葉にかかっているかどうかなんてどうでもいいのである。「今日は年長組さんとのお別れ会がある日で、『おわりの言葉』を言う役なので緊張しちゃう」と娘がにかにかしながら教えてくれる。先生から指名を受けて、その大役を仰せつかったんだそうだ。
そっか。しゃべってると磨きにくいよ。
はーい。
歯ブラシ噛まないんだよ。
はーい(にやにや)。

『月刊ウインド』4月号は、校正期間に入りました。