荒木夏実
4月2日~11日、9泊10日で韓国に一人旅。ソウル(鐘路3街)に6泊、晋州に2泊、仁川に1泊。往復の飛行機と宿、個人では行くことの出来ない北朝鮮との国境付近に広がる非武装地帯のツアーだけ予約し、あとは心の向くまま現地で決めた。テーマは食、映画、そして歴史。韓流ブームが続く中でドラマ、アイドル、美容に触れない私の旅はマニアックなものかも知れない。けれど、私が強く惹かれる三大テーマは朝から晩まで毎日私をワクワクさせた。
韓国語学習歴は多分6年。英語を中学1年の1学期で諦めた私は「語学なんて私に出来っこない」と半ば冗談半分で始めたから正確にいつ始めたのか覚えていない。今回の旅は調べるところから一切日本語を使わず、自分の韓国語がどこまで通じるか挑戦の旅でもあった。そんなこともあり、食べ物は韓国の人が勧める食べ物しか出てこない。
10日間の旅行記は長すぎるので次のタイトルで間隔を空けてアップしていこうと思う。
1日目 旅立ち 仁川空港からソウル鐘路3街
2日目 ソウル 尹東柱、青瓦台、教保文庫、大ヒット映画『破墓』鑑賞
3日目 水原市とソウル 『王の運命 歴史を変えた八日間』『正しい日 間違えた日』『悪い男』『チェイサー』『小説家の映画』を巡る
4日目 坡州市 脱北者と行くDMZツアー
5日目 束草市 この旅No.1の感動料理『ムルフェ』
6日目 ソウル 5年振りに友人と再会
7日目 ソウルと晋州市 唯一の平壌冷麺と夕食危機!?
8日目 ハプチョン郡 ハプチョン映像テーマパーク
9日目 晋州市 韓国3大ビビンバと『殺人の追憶』
10日目 帰国
1日目 旅立ち 仁川空港からソウル鐘路3街
新潟駅からバスに乗り新潟空港へ。到着後、飛行機のチケットを受け取ったまでは良かったのだが、すぐさま迷子に。しばらく彷徨っていると新潟を紹介するコーナーを見つけた。そこにはなんと『坂口安吾』が展示されていた。安吾がいなければシネ・ウインドは無かったかもしれない。齋藤代表にすぐさま連絡。それにしても国際線の入り口はどこにあるのだろうとベンチに腰掛け辺りを見回すと真横に国際線の入り口が。手荷物検査に引っ掛かるも無事待合室まで辿り着けた。5年前は日本人が多かったけれど、今回は韓国人が圧倒的に多かった。
飛行機に乗り込みいざ離陸!久々の飛行機にワクワクし、機内食を食べ、ちょっと一眠り。すると啜り泣く声が聞こた。目を開けると、隣に一人で座っている韓国マダムが口をギュッとつぐんでいる。気のせいかと思って目を閉じるとまた啜り泣く声が。私が目を開けると鳴き声は止まる。どうやら一生懸命泣くのを隠してるらしい。暫く窓にもたれかかって寝ているフリをした。着陸態勢に入る前に韓国マダムの友達らしい人が近づいてきて慰め始めた。そして「ごめんなさいね。みっともないところを見せちゃって。あなた韓国人でしょ?」話し掛けてきた。そこから少し雑談して「日本と韓国はこれから手を繋いでいかなくちゃいけない。政治はどうなっていくか分からないけれど、私たちは仲良くしましょ。」と。何だか気持ちの良い韓国着陸だった。
仁川国際空港第2ターミナルに着き、T-moneyカード(韓国版Suica)を買おうとしたが早速ここでも迷子に。警備員に尋ねコンビニで無事ゲットした。ソウル行きのリムジンバスに乗りたいが、どこでチケットを買うか分からずまた警備員に尋ね、チケット案内所で買い方を尋ね、無事バスに乗りソウルへ。
ホテル最寄りの鐘路3街タプゴル公園停留所で下車。5年前はバスが到着すると運転手が預け荷物を次々と放り出し、転がるキャリーケースを追いかけなければいけなかったが今回は丁寧に受け渡され驚く。そして徒歩でホテルへ。ソウルで6泊するホテルは1泊約18,000円。ソウルの宿泊費は5年前の2~3倍が相場だ。期待半分、不安半分でチェックインし部屋へ。カードキーで中に入ると壊れた換気扇の爆音が歓迎してくれた。天井に辛うじてぶら下がっている換気扇。電気も半分は点かない。薄暗い部屋の中でトコジラミのチェック。幸いにもトコジラミは居なかったのだがシーツ越しに謎の大きなシミを発見。満室のホテルで部屋を変えることも出来ない。あの価格でこの部屋。絶望だ。でも良いところがあるはずだとカーテンをシャッと開けると見渡す限りモーテルの看板。『ホテルピカソ』の看板を見つけ「鳥屋野潟にもありそうな名前。フフッ。」と小さなひと笑ができた。
ホテルに居ると気が滅入りそうなので散歩がてら夕ご飯を食べに行こう。ここはモーテルも多いけれど徒歩1分で飲食店街という好立地。道路沿いに満開の桜がズラッと咲くところもあり、歩道にテーブルが出され車道以外は若者達でぎゅうぎゅう詰め。平日の22時でも凄い賑わいだ。
ぐるっと飲食店街を回り『逸品ヤンピョンヘジャンクク』というチェーン店に入った。ヘジャンククは飲んだ次の日に体の調子を整える料理だ。へジャンククにも種類があるけれどお店一押しのメニュー『ヤンピョンヘジャンクク』を頼んでみた。バンチャン(おかず)が直ぐに出され、そう待たずにヘジャンククも運ばれてきた。お酒が残る体で食べる割には結構グロテスクな見た目だなと思いつつ、一口スープを飲んでみると柔らかな旨味が口に広がり爽やかなサッパリとした辛味が心地良い。朝から移動で疲れた体に染み渡る。具は豆もやしとセンマイ、牛の血を固めたソンジがこれみよがしに入っている。ソンジは見た目が怖いがそのまま食べても生臭くなく、テーブルに置かれた薬味とソースで食べても良い。レバーに近い味で固い豆腐のような食感。スープは塩分控え目なのにご飯を入れて食べてるとまた美味しい。旨味があれば塩分はこの程度でよいのかと気づいた。栄養たっぷり、量もたっぷり、そして美味しい夕食で大満足!
後から”ヤンピョン”を調べてみたら地域の名前だった。朝鮮時代に牛農家が多かったヤンピョンで骨や内臓を使ったヘジャンククが発達し有名になったらしい。言われてみれば仙台の牛タン定食でついてくるテールスープと近い旨味だった。チェーン店でこれだけ美味しいのだからヤンピョンで本物を食べてみたい。
絶望のホテルに戻り寝支度をしたが換気扇の音が煩くて寝られそうにない。フロントに内線をしたら親切に対応してくれ何とかなった。もう1時をとっくに超えている。明日の予定は起きたら考えよう。アラームは設定せずに床に着いた。