子猫とは、癒しと破壊である。と、僕は思う。
その子たちが牧場からやってきたのは、18年連れ添った猫が亡くなり、我が家が悲しみと淋しさに沈んでいるときだった。
そこは家族でよく行くお気に入りの牧場。その子たちは牧場の人たちに保護された他の子猫たちと一緒にいた兄妹猫。その子たちは、体を寄せ合いながら僕たちを潤んだ瞳で見上げ、確かにこう言った。
「僕たちを連れて帰ってくれニャ(兄)」
「それがいいニャ(妹)」
「わかったニャ」
気がつけば、段ボールに入った子猫を抱え、来たばかりの牧場を後にし、彼等のグッズを買いにホームセンター、そして我が家へと慌ただしく帰った。
秋から冬の季節が好きな我が家。ということで兄が「雪」、妹が「あき」。とにかく何をやっても可愛い子猫兄妹。慣れない我が家に怯え、「シャ~」と鳴く「雪」のか細い声、何事にも動じない「あき」がお腹を向けて寝る姿。ヨタヨタと猫とは思えない危なっかしさで歩く二匹。どれもこれも、18年連れ添った愛猫を失い、悲しみに沈んでいた我が家の良薬となった。
だがしかし、忘れていた。「子猫」を飼うということを。 この後、彼等に振り回される日々がどんなものになるかは、この兄妹がやってきた頃には想像もつかなかった我が家であった…。
(中村順一〈1〉) ※月刊ウインド2020年2月号掲載
■月刊ウインドの人気連載、2回ずつで書き手が変わるリレーコラムです。ウチの猫、ウチの犬のことが書きたい!という方は、月刊ウインド編集部までご連絡ください。